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戦国異伝供書
第百三話 緑から白へその二

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「今で、です」
「満足ですか」
「左様であります」 
 そうだというのだ。
「それで満足しています」
「そうなのですな」
「はい、そして思うことは」
 それはというと。
「以後尼子家は倒れることなく」
「栄えていけばいいとですな」
「考えています」
 こう言うのだった。
「ですからもうです」
「よいのですな」
「それがしは。もう毛利殿との遺恨もありませんので」
 このこともあってというのだ。
「それがしは家老にして頂いて」
「よいのですな」
「まことに」
「左様ですか、では次にお話をされる方はどなたでしょうか」
 あらためてだ、丹羽は一同に問うた。
「一体」
「ではです」
 氏康が出て来た。
「次はです」
「北条殿がですか」
「それで宜しいでしょうか」
「はい」
 丹羽は微笑んで応え他の者もだった。
 反対しなかった、それでだった。
 今度は氏康が話すことになった、彼はこれまでのことを皆に話しはじめた。
 僧衣を着た立派な鼻を持つ端整な顔の老人が幼い彼を見て言っていた。
「うむ、見れば見る程な」
「伊豆千代は、ですか」
「わし等の顔でな」
 老人、北条家の主である北条早雲は嫡男である北条宇治綱に話した。見れば彼も鼻が高く細面で端整な顔をしている。
「そしてな」
「顔にですか」
「わし等以上にじゃ」
 まさにというのだ。
「よい相が出ておってな」
「伊豆千代が家督を継げばですか」
「必ずな」
 まだ赤子である彼を見て話した。
「わし等以上にな」
「家を盛り上げますか」
「うむ」
 そうなるというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「わし等も家を栄えさせようとしておるが」
「それでもですな」
「伊豆千代の代にな」
 まさにというのだ。
「より栄える」
「そうなりますか」
「うむ」
 こう言うのだった。
「だからな」
「今は、ですな」
「我等の出来ることをしていこうぞ」
「それでは」
「そう考えると目の上のたん瘤はわかるな」
「扇谷上杉に山内上杉の両上杉家ですな」
「うむ、関東管領のあの家がな」
 まさにというのだ。
「当家にとっての敵じゃ」
「古河公方殿も怪しいですが」
「やはりこの両家じゃ」
 こう氏綱に話す、そしてさらに言うのだった。
「押してはいるがな」
「それでもどちらもしぶといですな」
「当家は今伊豆と相模を領地にしており武蔵に兵を進めておるが」
「それでもですな」
「やはり両上杉が立ちはだかっておる」
「両家の仲は相当に悪いですが」
 氏綱は父にこのことを話した。
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