ターン31 新世代の蕾、育むは水源
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長かったタッグデュエルが終わり、お互いに向かい合ってぺこぺこと頭を下げ続ける少女2人。すたすたと近寄った糸巻が、両者の頭を掴んで無理矢理に直立させる。
「はい、そこまでだ。デュエル歴もアタシらの比にならないぐらい短い、それも即席タッグで10年以上も最前線にいたアタシらをあそこまで追い込めたんだ。いつまでもそんなしみったれた反省会開いてないで、もっと胸張ってドーンと構えてな」
「お姉様……」
「糸巻さん……」
「振り返りは確かに大事だが、それがあら探しになるぐらいならやらない方がマシだ、ってのがアタシの持論でな。まあなんだ、まだまだこれからなんだから、そんなに気負わなくてもいいってことだ」
「はい!」
相変わらずのいい返事に満足したところでふと視線を感じ振り返ると、にやにやと笑う本源氏と目が合った。互いにデッキを引っ張り出してきゃいきゃいとガールズトークを始めた少女たちを残し、煙草に火をつけつつそちらへと距離を詰める。それに合わせて数歩下がりはしたが、笑みを引っ込める気はないらしい。
「……んだよ、文句でもあんのか?」
「いいや。ただ、昔と比べて随分と丸くなったと思ってな」
「アタシが?」
糸巻がしかめっ面で煙を吐くと、対照的に本源氏のにやにや笑いはさらに深くなる。
「とぼけるな。本来ならこのデュエル、お前のターンの時点で終わらせることもできただろう?」
「さて、何のことやら、だ」
口ではとぼけながらも、その目線は鋭く少女2人の方を向いている。しかし当の本人たちはいまだデッキ談議に花を咲かせており、糸巻と本源氏の話が聞こえている様子もない。同じものを確認した本源氏が、ゆっくりと腕を組んで壁によりかかった。
「とぼけるな、俺のカードのことだぞ。アノマロカリスでのダイレクトアタックが通った時、俺たちの墓地にはまだ幻影翼があった。あのカードは一時的な破壊耐性と火力をモンスターに与えるほかに、墓地から除外することで墓地の幻影騎士団1体を蘇生する効果がある。あの時俺たちの墓地には既に、攻撃力1300のステンドグリーブのカードが存在していた。あの流れで蘇生効果を使い、追撃を仕掛けていればそれで終わりだったはずだ」
「……」
図星だった。どことなく気まずい沈黙を、本源氏がまた破る。
「お前ほどのデュエリストが、それを見落とすなんてことがあるはずがない。だがあえてそれを見送り、元々このデュエルを始めるきっかけになったあの4人目のプレイヤーまで順番を回した。そんなまともな感性があったとは、本当に丸くなったものだ」
「……なあ、ちょっと待て。昔のアタシ、そこまで偏屈だったか?」
「ははは、何を言う。俺の記憶の中のお前なら、迷いなく削りきったあげく『悪いなぁ、だけど現実ってもんは厳しいんだよ』などと
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