ターン31 新世代の蕾、育むは水源
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ー・ビートルの足元へと結集していく。その光景に、八卦だけは既視感があった。
「まさか竹丸さん、あの伏せてたモンスターって……」
驚きのあまり目を丸くして親友の方へと向き直る八卦に、大人しい彼女にしては珍しい大輪の笑みで竹丸が首を縦に振った。
「はい!私のセットモンスター、グレイドル・アリゲーターの効果を発動します!私のフィールドのこのカードが戦闘か魔法の効果で破壊された時、相手モンスター1体の装備カードとなってそのコントロールを貰いますよ。私のところに来てください、マスター・キー・ビートル!」
すっかり甲虫の体の下に潜り込んだ銀の液体が、殻に守られておらず柔らかい腹やその関節からその体の中へと入り込んでいく。がくがくと小刻みに全身を震わせた後、その黄金の目の色がぐるりと銀色に塗り替えられた。その様子を誇らしげに見つめながら竹丸は、あの日このカードの元の持ち主、遊野清明と交わした話を思い出していた。
あれは彼が退院したほんの少し後、ケーキを買うためと理由をつけて様子を見に行った時だったか。自分もデュエルがしたいということや、そのための心構えについてはお見舞い中にも何度か話をして……1度はちょうど糸巻さんと鉢合わせて、悪いことをしているわけでもないのに思わずパニックになってしまったこともあった。ともかく、もう少し突っ込んだ話を聞いて貰ったのだ。
『なるほど……グレイドルの使い方を教えて欲しい、と』
『は、はい』
『いやー、僕が言うのもなんだけど……本当にこのテーマでいいの?割とやってることは正義の味方どころか、どー見ても悪魔の化身とか地獄の使者方面だよ?』
腕組みしてそんなことを、しかしその内容とは裏腹に自分のカードへの愛情のこもった声音で言う彼に、珍しく一生懸命になって自説をぶつけたときのことを思い出すと今でも顔が赤くなる。あの学校でのタッグデュエルの時、自分を助けてくれたのは他ならぬ彼とグレイドルカードだったこと。そしてそれを見たことが、デュエルモンスターズのプレイヤーに一歩を踏み出してみようと思ったきっかけであったこと。相手モンスターの力を利用して戦うのは立派な戦術であり、自分の目には理知的で格好いいものに映ったこと。
今になって思い返しても、なぜあそこまで自他ともに認める内気な自分があそこまで必死になったのかは彼女自身にも分からない。グレイドルの動きがそれだけ気に入ったのかもしれないし、あるいは冗談交じりとはいえ自分を助けてくれたヒーローの自虐的な言葉に、それを否定したいという衝動がこみ上げてきたのかもしれない。いずれにせよしばらく何か悩んだ後で、おもむろに彼は自分のデッキを取り出した。その中から何枚ものカードを1枚ずつ丁寧に抜き出し、最後にそっと親指で撫でてからそのカードの束を差し出した。
『
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