第百二話 家臣にしたい者その八
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「ならばな」
「それならばですな」
「渡す訳にはいきませぬな」
「何があろうとも」
「そうする、だからな」
それでというのだ。
「山中殿が来れば戦うぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「その様にしましょう」
「是非共な」
こう言ってだ、元就は山中に備えつつ領地の政に入った、もう彼はこれといって領地を拡げることはしなかった。
そうして政に専念していたが確かに織田家は動かなかった、それで元網も兄に話した。
「織田家の勢いが急に止まり」
「我等にもな」
「播磨の姫路城等は備えていますが」
「それでもな」
「攻める気配は全くありませんな」
「数年、まあ六年はな」
これ位はというのだ。
「間違いなくな」
「動きませぬか」
「そうであろう、そしてその間にな」
織田家はというのだ。
「さらにな」
「織田殿は土台を固められますか」
「そうなる、そしておそらく次の戦の相手は」
「織田殿のですな」
「朝倉家であろう」
この家だというのだ。
「越前のな」
「確かあの家は」
「織田家と仲が悪いからのう」
「元々どちらも斯波家の家臣でしたな」
「しかし家臣としての位は朝倉家の方が高くな」
それでというのだ。
「それで織田家を見下していて」
「織田家もそれに敵意を持ち」
「お互いに仲が悪いのですな」
「そうじゃ」
そうだというのだ。
「だが織田家の方からはな」
「何もされませぬか」
「これといってな、天下人としてな」
「余裕を以て、ですな」
「対されるであろうが」
朝倉家にというのだ。
「それでもな」
「朝倉家の方は、ですか」
「その気位から織田家を敵視してな」
そうしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「織田家と対しますか」
「そしてじゃ」
「戦にもですな」
「なるであろう」
「そうですか、ですが」
織田家と朝倉家が戦になればとだ、元網は話した。
「織田家は今や七百万石を超えていて朝倉家は八十万石」
「力の差は歴然じゃな」
「はい、ですから」
「戦になればな」
「朝倉家は負けますが」
「そうなるのは目に見えておるな」
「どう考えましても」
そうなるというのだ。
「流石に」
「朝倉家には出来た方がおられるがな」
「宗滴殿じゃな」
「あの方がおられますが」
「しかしあの御仁がおられてもな」
朝倉宗滴、実質的に朝倉家を支えている彼がというのだ。
「それでもじゃ」
「対することはですな」
「わしも出来ぬと思っておる」
「一万の軍勢で三十万を超える一向宗に勝たれましたが」
「一向宗は所詮戦を知らぬ百姓の集まり」
「侍とは違いますな」
「まともな武器もない」
一向宗にはというのだ。
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