第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第61話 神の依代と幸運の女神:後編
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姫が言うと、18本の腕を持つ豪華絢爛な雰囲気を持つ神が彼女の前に顕現した。その圧倒的雰囲気に感慨に耽る間も惜しみながら依姫はスペルを宣言する。
「【掴符「希望をたぐり寄せる神の腕」】!!」
依姫のその命を受け、神は無数の腕で宙に打ち上げられた刀の回収を試みるのであった。
「……」
その様子を見ながらフォルは思った。──見事です、さすがは私が見込んだ方です、この状況でも一瞬の判断で勝負を諦めない心構えは見上げたものです、と。
それでもフォルは非情に撤するのだった。いや、依姫がそういう奮闘を見せるからこそ、こちらも抜かりなく戦い切らなければならない、そう考えるのだった。
だから彼女はこのスペルを発動した。
「【幸運「降吽の矢」】!!」
そのスペルの発動したすぐ後であった。今正に千手観音の手が届かんとしていた刀が、刃を下に向けて勢いよく落下したのだ。
「!!」
それを依姫は寸での所で回避した。その後刀は地面に突き刺さり動かなくなった。
暫くその場に沈黙が走ったが、それを依姫が破った。
「……私の負けですね」
ここに依姫は敗北宣言をしたのだった。
◇ ◇ ◇
「何故ですか依姫さん!?」
勇美は涙ぐみながら依姫に迫る。無理もないだろう。完全無敗だった自分の憧れの存在が、敗けを認めてしまったのだから。
「勇美……」
そんな勇美に対して、依姫は諭すように説明を始める。
──曰く、自分とフォルの戦いは一つのミスが命取りのものだったという事である。
故に、依姫が刀を取り戻そうとした行為が阻止された時点で、戦いの流れが乱されてそれ以上進まなくなってしまった訳であるのだ。
「悔しいですけど、そう言われてみれば……」
事態を飲み込む事はまだ難しいながらも、勇美は今まで見ていた戦いを思い返すと、依姫の言わんとしている事が理解出来るのだった。
──あの戦いは綿密に練られた芸術作品のようなものだったと。だから、綻びが生じればそこから崩れてしまうのだと。
そんな二人を見ていたフォルであったが、ここで彼女達に言葉を掛けてきた。
「ですが二人とも良い目をしていますよ。やはり私が『今』を選んだのは正解だったようですね」
「今……ですか?」
フォルにそう言われて、勇美はきょとんと首を傾げた。そんな勇美にフォルは説明をしていく。
彼女曰く、依姫に関しては月と幻想郷の勝負で、程好く負けをしった事により精神強さと心の余裕を知ったと。
そして、勇美の場合は一度圧倒された相手に見事雪辱を果たす事に成功した事により成長したと。
そのような貴重な体験をこなした今の二人だからこそ、自分と戦っても心が折れる事なく、寧ろ糧になるだろうと。
つまりフォルは勇美と依姫の更なる成長を願って依姫と自分との勝負を提案し
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