第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第60話 神の依代と幸運の女神:前編
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ぐれが何度も通用するとは思わない事です。
炎雷神の頭は後七つ残っていますよ」
言うと依姫は刀をフォル目掛け差し向けながら言い放った。
「やりなさい」
その合図を皮切りに、残りの炎の大蛇の猛攻が次々と行われた。二匹目が飛び掛かり噛み付き、三匹目、四匹目と続いたのだ。
だが、それをフォルはものの見事に、全てをのらりくらりと足捌きだけで回避していった。
それは、ボクシング等でいう所の『フットワーク』であろう。正にフォルは足を攻撃には使わないが『戦い』にはきっちり使うという模範的なボクサーそのものの肉体の行使の仕方をしていたのだった。
その後も大蛇の毒牙をかわしては距離を取り、再びかわすという芸術的な身のこなしをフォルは行っていったのだ。
このまま続けても埒が明かないだろうと思われた。だが、依姫の目は真っ直ぐにフォルを見据えていたのだった。
そんな依姫にフォルは提案をしてくる。
「いい加減諦めませんか? このままやっても私はかわし続けますよ?」
フォルの正論を付く発言。だが依姫はここで口角を上げながら言った。
「確かにこのまま続けても泥試合でしょうね……一対一の戦いの場合なら、ですけどね」
その言葉の後、依姫は刀を空に高らかと掲げて宣言した。
「邪神の化身達よ、あの者に『一斉に』襲い掛かれ!」
依姫の新たな命を受け、大蛇達の挙動に変化が訪れるのだった。
それまでは各々が、謂わば勝手に動いていた状態であった。だが、今の合図を受けて統率が生まれたようである。
そして、八体の大蛇は全てが一点を目掛けて飛び掛かっていったのだ。──ただフォルという倒すべき相手に向かって……。
「くっ……」
さすがのフォルも依姫のこの機転には息を飲んだのだ。
ボクシングでは、フットワークを巧みにこなす事で相手の攻撃に対処出来る。──しかし、それは相手が『一人』であればの話なのだ。
リングの上では常に一人を相手にする、それがボクシングというものである。
しかし、今行われている弾幕ごっこは、それとは些か違うルールの下行われているのだ。
故に、一人を相手に複数で挑むケースもあるという事であった。
それが正に今なのであった。依姫が放った炎の使い達は同時にいたいけな獲物に牙を突き立て襲撃したのだった。
その瞬間激しい炎の爆ぜがフォルを包んだのだ。そして辺りは一瞬にして業火に覆われた。
それからしばらく続いた炎の奔流であったが、それもやがて終焉を迎える。
それにより、当然視界も晴れて来たのだ。
そこにあったものは……。
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