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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第60話 神の依代と幸運の女神:前編
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力の名を、依姫は宣言する。
「【番龍「ヤマタノドラゴン」】……」
 そう、依姫が剛の力で最も得意とする、炎で練り上げられた八ツ首の大蛇であったのだ。
「これは……」
 さすがのフォルとて、この勇姿には肝を冷やしてしまう。だが、彼女は女神という存在である。故に、表にはその心境を余り出さずに対処したのだった。
 相手がどういう反応をすれど、やる事は変わらない。依姫は邪神の姿を模した炎に命令を下した。
「炎雷神よ、その炎の牙で敵を噛み砕け」
 その指令を受け、八つある炎の首は猛々しく唸り声を上げた。そして、その内の一体がフォルに襲い掛かったのだ。
「フォル様、次は焼け焦げるだけでは済みませんよ」
 依姫は得意気に挑発的に言うが。
「つまり、服全部焼けてすっぽんぽんですか〜♪」
 勇美が台無しにしてしまったのだった。
「勇美、ちょっと黙っていなさい」
「……はい」
 依姫に養豚場の豚を見るような表情で言われて勇美は素直に口をつぐんだ。
 脳味噌が春全開な外野は放っておいて、視点は再び神の領域の者同士の戦いへと向けられる。
 依姫の放った炎の大蛇の一角は刻一刻といたいけな出で立ちの女神へと容赦なく迫っていたのだった。
 そして、獲物まで距離を詰めた炎熱の肉食爬虫類は飢えを満たすが如く大口を開けて牙を見せ付けた。
「まあ怖い……」
 狂暴な肉食獣にその身を脅かされる寸前となり、そう告白するフォル。
 だが……。恐れている様子はその台詞のみで、態度はそれとは見事に真逆なのであった。
「でも良かったですわ。今の私は動きやすくなっていますし♪」
 人差し指を上に上げて、茶目っ気を醸しながらのたまうフォル。
 そしてフォルは懐からスペルカードを取り出す。
 ──文字通り『懐』である。フォルはその薄着の中で強調されている胸肉を掻き分けるようにまさぐり、スペルカードを取り出したのだ。
 そんな破廉恥な様子を見ながら依姫は思った。やはりこの女神様は青少年の目によろしくはないと。そういう依姫も今は違えど基本はスカートにスリットが入った、やや際どい出で立ちをしているのだが。
 依姫が彼女にしては仕様もない事を考えている間に、フォルはスペルの宣言をするのだった。
「【幸運「幸せの歩み」】」
 そう宣言したフォルであったが、今の彼女に目立った変化は見られなかった。
 だが、炎の大蛇が彼女に噛み掛かった所でそれは分かるのだった。
 大蛇が噛みつく寸での所で、フォルは見事な足捌きでそれをかわしたのだ。
「えっ!?」
 その様子を見て勇美は驚いてしまった。今正に依姫の攻撃はフォルに届かんとしていたのだから。
「ふぅ……」
 何事もなく一息つくフォル。その様子を依姫は無言で見据えていた。
 だが、意を決して依姫は口を開く。
「ま
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