第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第60話 神の依代と幸運の女神:前編
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姫が放った鋼の群れを薙ぎ払っていったのだった。
「そんな……」
その様子を見ていた勇美が思わず呟いた。依姫が仕掛けた攻撃が、こうも簡単に攻略される所を彼女は見た事がなかったからである。
そんな最中、とうとう依姫の攻撃が終了したのだった。
「……」
その後、依姫は無言でその場に立ち尽くしていた。手刀一振りで自分の攻撃を回避された、そのような事は月の守護者になってからは経験してはいなかったのだ。
この事からも、フォルの力量の高さは得てして知るべきである。──とてもではないが、一筋縄でいく相手ではない。
人はこういう局面では『挫折感』というものを味わうだろう。それも、優秀な人であればその分。
だが、今の依姫は違っていた。何故なら、月の守護者になった今でこそエリートであるが、そうなるまでは彼女とて失敗や挫折はあったのだ。それを彼女は今まで忘れる事なく励みにしてきたのだ。
それに、依姫は先の月と幻想郷の勝負において、やや手厳しい手土産まで貰っているのだ。
そう、『ぎゃふん』と言わされたあの一件である。それにより綿月姉妹は『負けづらい存在』でありながら負けを知る事が出来たのだ。
敵であった相手が二人の糧になるような事を敢えてする訳はないだろう。だが、それを『怪我の巧妙』だと利用してやろうという意気込みが今の依姫にはあった。
そして、依姫は凛々しい表情でフォルを見据える。
「素晴らしいですわ。あなたの目は今の状況でもまるで曇ってはいませんわ」
そうフォルは依姫を評価する。それは決して嫌味ではなく、彼女の素直な称賛の意であった。
「それはどうも」
それに対して依姫は、やや皮肉を込めて返す。いくら相手が手強いものであり、尊敬すべき存在であれど、勝負するとなれば話は別である。
だから対峙する者として相応しい態度を依姫は取るのだった。それが彼女流れの敬意の示し方なのであった。
そして、第一の攻撃をかわされた依姫は次なる手を打つ。
「『祗園様』に『愛宕様』よ」
依姫は彼女にとってお馴染みの神々を降ろした。しかし、この組み合わせは初めてである。
(依姫さんはどうするつもりだろう……?)
そう思いながら勇美は事の成り行きを見守る事にしたのだった。
勇美がそう思っていると、依姫は手に持った刀を真横に翳したのだ。
(?)
今までにない依姫の動作に、勇美は首を傾げた。
その次の瞬間であった。依姫の刀に燃え盛る炎が現出したのだった。
格好いい……。少女なのに男のロマンを追求する勇美にとって、それは正に生唾ものの光景なのであった。思わず彼女は感涙しそうになる。
一方で依姫である。剣に炎を纏わり付けて斬り掛かっても、それはただ炎の攻撃と斬撃を同時に繰り出すだけの事にしかならないのである。
──そん
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