第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第59話 新たなる挑戦者
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の言葉すら生ぬるくさせるような存在がそこにはいたのだった。
そんな圧倒的な存在に、庶民の出身である勇美は勿論、名家の出身である依姫ですらも呆気に取られてしまっていた。
そう二人が狐に摘ままれたような振る舞いをしている中、その美女は口を開くのだった。
「まあ、そう気を張らずにして下さいな」
僅か、その言葉を発しただけであった。だが、それだけで聞く者全てを優しく抱擁するかのような心地好さ、優しさを提供してくれた。
その存在だけで『幸せ』を構築してしまうような圧倒的な雰囲気。ずっと側にいて話掛けてくれるだけで幸福を感じ続けられるだろう。
永遠にそうしていたいと勇美は思う程であった。しかし、彼女はそんな心地良さに自ら鞭を打つかのように本題に入るのだった。
「あの、私達。因幡てゐちゃんにここに来るように言伝を受けたのですけど、彼女はいないのですか?」
漸く快楽の湯船から這い上がり切り出した勇美。そんな彼女に美女は包容力のある笑みで持って受け止めて言った。
「残念ですが、あの子は今この場にはいませんよ」
「そうですか……」
その美女の言葉を聞いて惜しいなと勇美は感じた。彼女にもこの人の魅力を一緒に味わってもらいたいと心の底から感じるのであった。
そんな想いに耽る勇美に、美女は思いがけない事を言い始めた。
「ですが、残念がる事はありませんよ? てゐさんがあなた方に会わせたかったのは私なのですから」
「えっ!?」
この発言に勇美は驚いてしまった。
あの幼い悪戯っ子にしか見えないてゐが、このような凄い人と知り合いなのかと。
その意外な事実に勇美は面喰らってしまうのであった。
そう勇美が呆気に取られている間に、その美女は微笑みを絶さずに続けた。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね……」
言って美女は優雅に一礼して、再び頭を上げた。そのごく普通の挨拶ですら、その者が行うとそれだけで神秘的に映るのであった。
一呼吸置き、とうとうその者は名前を名乗った。
「私、フォルトゥーナ・シグザールと言います。『幸運の女神』なんてものをやらせて頂いていますよ」
「女神……様……」
言葉たどたどしく勇美は反芻した。
──女神。どうりでこの人の纏う雰囲気は一線を画しているのだと納得するのであった。
そう思いながら勇美は美女──フォルトゥーナに話掛けた。
「それで、フォルトゥーナ様。私達にどんな用なのですか?」
その勇美を、フォルトゥーナは少し困ったように見据えていた。
「う〜ん、それだと長くて大変でしょう。私の事は『フォル』と呼ぶといいでしょう」
「あ、はい。フォル様……。助かります」
勇美は頬を赤らめながらフォルに返した。
「いいのよ。
それで、あなた方への御用でしたか?」
「ええ」
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