第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第58話 秘策:後編
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、わしらの勝負に忌まわしい何者かが割り込んだ為じゃ。
──お主との勝負は、わしが地面に体を打ち付けた時にお主の勝ちに決まっていたのじゃよ」
「跳流さん……」
「さあ、勝者は勝者らしく堂々とするのじゃ♪」
そう言って跳流は勇美を励ますようにポンと叩いた。その跳流の気持ちに応えるべく、勇美は堂々と胸を張って言う。
「はい、素晴らしい勝負をありがとうございました!」
「うむ、その粋じゃ♪」
吹っ切れた勇美に対して、跳流はうんうんと頷く。
「そうじゃ」
そこで跳流は何か思い立ったように切り出した。
「何ですか、跳流さん?」
「お主の勝利を祝って、わしからの餞別をしようかと思っての」
「わぁい、何でしょう。楽しみです♪」
この時点で勇美は「お礼なんてそんな……」等という安っぽい謙遜はしなくなっていた。この事も彼女の成長を物語る要素となっているかも知れない。
「それはこれじゃ」
そう言って跳流は鮮やかなグリーンに輝く珠を差し出したのだ。
「わあ、綺麗……」
思わず見とれる勇美。彼女も女の子である、故に宝石のような物には心が引かれるのであった。
「これは、わしの妖力を凝縮した物でな。
フランドールとやらの一部を使いこなしたお主なら同じく使いこなせる筈じゃ。
名前は、名付けて『アバドンズジェネレーター』じゃ」
「要りません」
勇美は即座に断った。悪徳商法を断る際の正しい断り方の如く。
「それは色々マズいので遠慮させて頂きます」
「いや、お主のスペル名も大概じゃぞ」
「ぐぬぬ……」
そう指摘されて、勇美は口ごもるしかなかった。勇美は勝負には勝ったが、言い合いでは負けたという事である。
「私の負けですよ。跳流さんの餞別、有り難く受け取らせてもらいます」
「そう来なくてはな」
言って跳流はとうとう勇美に自分の拵えた一品を手渡した。
それを受け取り、勇美は高らかに掲げ、宣言した。
「アバドンズジェネレーター、ゲットだぜ!」
「勇美、貴方も大概よ……」
似た者同士かと、依姫は頭を抱えながら項垂れるのだった。
(それにしても……)
そう依姫は想いを馳せる。私と同じタイプの、勇美にとってやりづらい筈だった者に対して彼女は勝利したのだと。
勇美の成長がますます著しいものとなって来たと、そう依姫は感慨に耽るのだった。
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