第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第58話 秘策:後編
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口からも同じ色の弾が吐き出され、ぶつかり打ち砕いていく。
勿論跳流も弾の増員は怠ってはいなかった。砕かれては生み出されるというサイクルが繰り返されていったのだった。
だが、自分の体術の延長線上で繰り出す跳流に対して、勇美は銃器を用いていたのだ。更にはフランドールから受け取ったパワーユニットのサポートまで受けていたのである。
つまりは、跳流の方が僅差で分が悪かったのだった。
(まずったのう……)
そう跳流が思った時には既に遅かったのであった。──とうとう彼女の元にも現れたのだった、例の照準が。
(やれやれ……)
そう心の中で跳流は呟き、覚悟を決めたのだ。
そして、その今の好機をずっと伺っていた勇美は迷わずに手に持った引き金を引いたのであった。
──一瞬であった。的となった跳流自身に、一筋の黄金色の光線が突き刺さっていた。
「くぬぅ……」
攻撃をまともに喰らってくぐもった声を絞り出す跳流。そして、彼女は宙に存在していたその体のバランスを崩してそのまま地面へと落下していったのだった。
跳流は今度は受け身を取る余裕はなく、そのまま地面にその身を叩き付けてしまった。
「ぐうっ……」
思わず呻き声をあげてしまう跳流。彼女の肉体は妖怪であるが、強かにその地に叩きつけられてはそのダメージは無視出来るものではないだろう。
そのような状態から、跳流は上体を起こす。
「ぐぬぬぬ……」
思わず唸りながらも彼女はまだ戦う意思を見せていた。この程度のダメージは妖怪たる跳流ならすぐに回復するのだ。
その後に体勢を立て直して反撃に出ればいい。そう跳流が勝利へのプランを立てている時であった。
「……っ?」
突然彼女は目眩を覚えたのだ。
だが、それは地面への激突から来るものではなかったのだ。
それは、無意識の内に『バッタの群れ』に戻りながら畑を襲撃していた時と同じ感覚。
そして、彼女の意識の中に声が鳴り響く。
──無様だな。そんな不甲斐ないお前に手助けをしてやろう。
その言葉を跳流は拒否をする。
「余計な真似をするな、これはわし自身のあやつとの勝負じゃ!」
「跳流さん……?」
突然声量を上げて意味ありげな独り言を言い始めた跳流を心配し、勇美は彼女に呼び掛けた。
その勇美の対応に跳流は微笑みを見せた。
「敵であるわしを気遣ってくれるのか、否定する輩は多いがその心は大切にすべきじゃぞ」
「……」
その言葉を勇美は無言で聞いていた。そう言われて嬉しい反面、やはり様子がおかしい跳流の事が心配なのであった。
「だが、済まぬのう。
見ての通り、わしはこのような有様じゃ。
じゃからどうやらこの勝負、続けられそうになさそうじゃ」
だから、早くこの場を離れろ。そう跳流が言おうとした時であった
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