第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第56話 秘策:前編
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間一髪っと」
勇美は額の汗を拭いながら一息ついた。
だが、跳流達はその状況を嘲笑うかのような心持ちであった。人間の姿を取っていたら口角が歪に上がっていた事であろう。
「甘いのう」
「わしらが三体になった意味、完全には理解していないと見受けられる」
「では教えてしんぜよう」
三体がそのような意思疏通をすると、それを有言実行すべく二体目のバッタが行動を始めたのだ。
「まさか……」
勇美は思わず唾を飲んでその様子を見やった。
「ほう、今度は勘がいいのう」
そう、エネルギーを溜めていない跳流の一匹が言った。
「察しの通りじゃ♪ それじゃあ頼むぞ」
その言葉に応える形で、今しがた迎撃体勢に出ていた個体は遂に行動に出た。
そして、再びバッタ形態の跳流からエネルギー弾が放出されたのだ。
「くっ……」
それを毒づきながら回避する勇美。
その回避事態は成功するも、彼女の心境は決して穏やかではなかった。
その様子に気付いた跳流の一体が勇美に指摘をしてくる。
「どうやら気付いたようじゃのう♪」
「ええ、数を生かしての『一人での連携プレー』見事です」
勇美のその指摘こそが答えであった。
単純な事である。自分の体を複数に出来るのなら、それを攻撃に使用してしまえばいい。それだけの事である。
勇美に言われて、跳流達も得意気になる。
「分かってもらえたならば、後はやるだけじゃな」
「そういう事じゃ♪」
そして、跳流達の連携攻撃は始まったのだ。
一匹が弾を発射する内に、他の一匹が攻撃を溜める。そしてエネルギーを溜めたその一匹が発射する中で更にもう一匹が溜める。
それを勇美は辛うじてかわし続けていた。だが、やはり彼女の肉体は人間のものである。
「はあ……はあ……」
攻撃をかわし続けた勇美は、体力の問題で壁にぶち当たっていたのだった。
「やはり辛そうじゃのう……」
そんな最中跳流の一体はそう言い始めた。
そして、こんな事を言い始める。
「そなたは人間だからのう。やはり限界があるのじゃのう」
「もしそなたが妖怪などであったら、存分に戦う事が出来たかも知れぬのにな」
「……」
その跳流の言葉を聞いて勇美は暫し無言になる。俯き加減なので表情を読み取る事は出来ない。
そして、勇美はおもむろにがばっと顔を上げて跳流達を見据えたのだ。
「いいえ、ご心配には及びません」
そう勇美ははっきりとした声で言い始めた。
「ほう……?」
それを首を傾げながら聞き入る跳流達。その状況の中で勇美は続ける。
「それはどういう事じゃろうか?」
その疑問を一体が口にする。
それに対して勇美は堂々と答えていく。
「それは、私がここまで来れたのは、私が人間だったからだと思うんです!」
「『人間
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