第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第56話 秘策:前編
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そのような状態を過ごしながら時刻は午前の十時を迎えたのだ。
眠気も一頻り晴れ、体も覚醒し、まだ空腹も訪れないという、戦いには非常に好ましい時間帯である。
そう、この時間での再開を跳流は約束してくれたのだ。
その事実を心の中で反芻しながら、勇美は呟いた。
「やっぱり跳流さんって律儀な方ですね。私がより実力を発揮できる時間を再戦の時に選んでくれたんですから」
これから戦う敵だというのに、敬意さえ覚えてしまう天晴れな相手であると勇美は心踊る気分であった。
「そうね、私も見習うべき所があるわね」
依姫もそれに相槌を打ち、更に尊敬の念を浮かべた。彼女とて素晴らしい相手であると思うのだ。
だが、だからといってそれに酔ってばかりはいられないのだ。依姫はここで勇美、そして自分自身に釘を刺す意味合いで付け加える。
「でも、だからこそ油断してはいけないわよ。それだけ相手には余裕があるのだからね」
「はい、跳流さんは幻想郷の住人としても中々見ない方ですからね。
こちらも気を引き締めていかないといけないでしょうね」
依姫に言われた勇美の表情も凛々しく真剣なものとなっていた。
そんな二人に対してメディスンもいつになく真剣な面持ちとなりそうになる。
「……」
だが、そこで彼女は思った。余り緊張ばかりはしていられないと。せめて外野である自分は努めてリラックスして場を和ませるべき、そう考えたのだ。
「勇美、ここは『だっふんだ!』よ」
「はえ……っ?」
メディスンに突拍子もない事を言われて、勇美は声が裏返ってしまったのだった。
そこで勇美は突っ込みを入れる。
「メディスンちゃん……せめてここは『だいじょぶだぁ?』にしておかないと……」
「ですよね〜♪」
「全くもう」
そして勇美はやれやれと呆れつつも微笑ましい表情を浮かべるのだった。
そして、彼女は気付いていないが、今のやり取りで幾分肩の力が軽くなったのである。
これによってメディスンの場を和ませる役割は果たされたのだった。
(この子、やるわね……)
そんな二人のやり取りを依姫は感心しながら見守りながら思うのだった。──いつの間にこうもメディスンは成長したものだと。
彼女は少し前までは自分の個人的な復讐に固執して──楽園の閻魔の言葉を借りれば『視野が狭い』──いたのだが、それが今では勇美に然り気無い配慮を見せるにまで至っているのである。
これは勿論メディスン自身に秘められていたポテンシャルでもあったのだろう。そしてそれは他でもない、彼女自身の手柄なのである。
だが、そこに至るまでには、勇美の存在抜きにしては有り得なかった事かも知れないのだ。
そう、勇美には一緒に戦った者と打ち解けたり、その者が内に秘めているものを引き出す手助けをする、そ
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