第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第54話 虫の皇
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とは言わん。じゃがこれは故意ではない、それだけは信じて欲しい」
そう切実に言葉を紡いだ後、跳流は最後にこう言った。
「わしは逃げも隠れもせぬ。じゃからまた勝負がしたくなったら再びここに来ると良い。それじゃあの」
そう跳流は親指を上に立てると、その体を一瞬の内に無数のバッタの群れに分散させるとそのまま何処かへ飛び差って行ってしまったのだった。
◇ ◇ ◇
後に残されたのは、ようやく体の痛みも収まり立ち上がろうとしていた勇美と、事の一部始終を見守っていた依姫の二人であった。
依姫は勇美の元へと駆け寄り、抱擁力のある声で言った。
「立てる?」
「はい」
依姫の気遣いに嬉しくなり、勇美は満たされるような気持ちの下にその体を起こすのであった。
そこへ依姫は優しく手を貸した。普段なら自分で立つのを待っていたかも知れないが、今回は手を差し伸べたい……そういう心持ちとなっていたのだった。
「ありがとうございます」
そんな依姫の配慮に、勇美は微笑みで返した。
◇ ◇ ◇
そして、二人は一先ず永遠亭へと戻って来たのだった。
まずは戦いによって生まれた心身共の疲労を癒す事が先決だと依姫は考えての事であった。
そして、依頼の妖怪退治は失敗だと慧音に報告するのはその後でいいだろうと依姫は考えるのだった。慧音は厳格だが、そういう所は寛容であると依姫は知っているからである。
現在、二人は休憩室で寛いでいた。勿論依姫は見守っていただけだが、勇美が疲弊している事を考慮して付き添っているのである。
そんな中、勇美が言葉を発した。
「跳流さんって、随分潔い妖怪さんだったんですね、私感心しちゃいました♪」
「ええ、あの子は誠実な子でしたね。私の元にいる玉兎達もああいう所は見習わないといけないわね」
爽やかに話す勇美に対して、依姫も少しおどけて相槌を打つ。だが、依姫は気付いていた。
「しかし、危ない所でした。跳流さんには悪いけど、あの時様子がおかしくならなかったら私、ちょっと痛い思いをしていたでしょうから」
「そうね、怪我の功名って奴かしらね?」
饒舌に話す勇美に依姫もまた巧みに返していく。
だが、それはここまでにしようと依姫は踏んだのだ。そして、彼女は『本題』に入る事にした。
依姫は一呼吸置いて、それに触れる。
「……泣いてもいいのよ?」
その言葉を依姫はさりげなく言った。
それを聞いて、勇美はぽつりと呟く。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせて下さいね」
そして、この言葉を皮切りに、勇美の瞳が潤み、そこから端を切ったように大粒の涙が溢れてきたのだった。
勇美はしゃくり上げながら抱いていた鬱憤を漏らす。
「私の戦い方が通用しなかった……負けたくなかったー!」
嗚咽交じりに勇美は
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