第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第54話 虫の皇
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った。彼女の手のひらから一気にむせかえるような熱の波動が放出されたのだ。
その熱の奔流は勇美の放った鉄球を飲み込んだ。
「!!」
次の瞬間勇美は目を見開いてしまった。何故なら、みるみるうちに熱の波動がその鉄の珠をチョコレートのように溶かしてしまったのだから。
鉄を溶かすという荒業を成し遂げた熱風は、そのまま勇美の元へと繰り出していったのだ。
勇美は渾身の一撃を打ち砕かれ、成す術がなかったのだ。そのまま彼女はその熱風を受ける事となった。
「くうっ……」
幸い勇美はその攻撃に弾かれる形になったので、直撃されて彼女自身が溶かされる事はなかった。
そもそも、この熱は跳流が弾幕ごっこである事を考慮して、生物は溶かされないように調整されていたので心配は無用であった訳だが。
だが、それでも凄まじい威力には変わりはなかった。故に勇美は派手に吹き飛ばされてしまったのだった。
そして、勇美はしたたかに地面に体を打ち付けてしまった。だが、ここが草原だった為に草がクッション代わりになって衝撃を和らげたのは不幸中の幸いと言えた。
「っ……」
体に走る痛みにより、苦悶の表情を浮かべる勇美。
体は思うように動いてくれない。故にこのまま勝負するのは不可能だろう。
次に攻撃がくれば避ける事は出来ない。それならば勇美が行うべき事は一つである。
──だが、その行為をする事を勇美ははばかられる気持ちになるのだった。何か心に引っ掛かりを感じたのだ。
勇美の心の内で起こる葛藤。それに勇美が戦っている最中に事は起こった。
「ぐっ……」
突然、勝利を目前とした跳流が苦悶の声と表情を示したのだ。
彼女は頭を抑え、何かに耐えているようだ。
「済まぬ……。この勝負、お預けという事にしてはくれぬか……?」
優勢であった状況から一転、深いに体にこびりつく脂汗を掻きながら跳流は未だ地面に突っ伏している勇美に懇願するようにそう言ったのだ。
「跳流……さん?」
事の流れが読めない勇美は体の痛みに耐えつつも跳流に聞いた。
それに対して、跳流は苦しそうながらも優しい表情で勇美に言う。
「実はわしは最近になって、永く生きた妖怪バッタの群れが集まって生まれた新しい妖怪なのじゃ」
「そう、だったんですか」
(成る程、それで)
勇美がその事実に返事を返すのと同じくして、依姫は合点がいった。だから今までこれ程の力を持っていながら確認されていなかったのかと。──誕生していなければ、当然存在などしていない訳であるから。
依姫がそのような思いを馳せる中、跳流は続けた。
「そういう訳じゃから、まだわしはこの体を完全には制御出来ていないんじゃ。
だから人里で人間が端正込めて拵えた畑の作物を襲うなんて事をしてしもうたんじゃ。
わしが悪くない
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