第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第54話 虫の皇
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がおもむろにそう言うと、彼女は宙に『ほぼ』浮いた体勢のまま新たなスペルを宣言した。
「【隕符「皇帝式彗星脚」】!」
その宣言に乗る形で、跳流は右足に妖力を纏ってそのまま勇美に突っ込んで来たのだった。それは正に彗星の如く。
これをまともに喰らってはひとたまりもない。そう思った勇美はその攻撃に対処して行動した。
「【装甲「シールドパンツァー」】!」
そう言って勇美は鋼の化身に守りの命令を下すが。
「速いっ……」
敵の蹴撃は予想だにしない程速かったのである。
それにより勇美は盾の顕現が完全には間に合わなかったのであった。
未完成の装甲車に、容赦なく敵の脚撃が突き刺さったのだ。
そしてその蹴りは装甲を貫くと、衝撃は本体の勇美もろとも吹き飛ばしてしまった。
「くぅっ……」
今度は勇美は体勢を取る事が出来ずに地面に倒れてしまった。勇美を引き立てている生足が投げ出され、今回は痛々しさを醸し出す事となっていた。
「すまぬな、ちとやり過ぎたかのぅ」
その様子を、跳流は頭を掻きながら申し訳なさそうに見ながら言った。
それは跳流の考え方からであった。相手を意気消沈させて追い込むような戦い方を彼女は望んではいないのだ。
相手の心を折らずに、可能な限りベストな状態のそれと戦う事を望む。それは正に……。
「あの子、どこか私に似てるわね」
そう依姫は勇美に聞こえるか聞こえないかの声量でそう呟いた。
そして、それが依姫の見解であった。つまり跳流の方針は依姫に似通う所があると。
故に依姫は思うのだった。
(勇美にとって、やりづらい相手ね……)
そう依姫は心の中で結論を述べたのであった。
勇美は依姫に憧れ、理想の存在としているのだ。つまりは『到達点』であり『通過点』ではないのだ。
だが、その『到達点』である依姫と、勝たねばならない跳流が似通っているのだ。
『目標』に似た存在を『打ち倒す』事が出来るのだろうか? 依姫はそう勇美を懸念するのだった。
(でも、勝負は最後まで見てみなければ分からないわね。見届けさせてもらうわ)
そう思い、依姫はこの戦いの行く末を見据える事にしたのだった。
「ううん……」
勇美は唸り声を出しながら身体を起こし、跳流に向き直った。そして、このような事を言い始めた。
「跳流さん、あなたは素晴らしい妖怪です。正々堂々としていて、相手の尊重も忘れないなんて立派です」
「そ、そうかのぅ……」
そのように勇美に言われて跳流はこそばゆい気持ちになり頬をほんのり赤く染めるのだった。どうやら彼女は照れ屋な所があるようだ。
そう言った勇美は更に続ける。
「だからこそ、私はあなたに負けたくないのです」
「それは光栄じゃのう」
勇美にそう言われて跳流は鼻が高くなる気持ちとなった。
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