第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第54話 虫の皇
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たとはいえ、直撃を受けた勇美はその場から弾き飛ばされてしまった。そして、その間に攻撃に耐えきれなかった手甲は砕けてしまったのだった。
「っ……!」
何とか姿勢を立て直してその場に踏み留まった勇美。それを跳流は感心したように見ながら言った。
「ほう、今の攻撃を受け流すとはやるのう」
「……」
挑発と賞賛の入り交じった跳流の言葉に軽口で返す余裕は勇美には無くなっていた。
そんな勇美に、跳流は容赦なく言う。
「だが、今のはわしの反撃だったからのう。次はわしから行かせてもらうとするかのう」
そして跳流は身構えた。
「来る!?」
そう勇美が読んだのと同時であった。
跳流は勇ましく地面をその足で踏み込むと、身体のバネを使い勢い良く飛び上がったのだった。
そして、跳流は宙を舞っていた。まるで太陽を背負っているかのように。
そこから跳流はスペルを宣言した。
「【連脚「星降るが如く蹴撃」】!」
すると、跳流はまるで重力をほとんど無視したかのように宙に固定されているかのように留まり、その体勢のまま蹴りを連続で放ったのだ。
今度こそ攻撃は防いでみせる。そう意気込んだ勇美は次なるスペルを発動した。
「【星蒔「クェーサースプラッシュ」】!!」
勇美は『金山彦命』と『天津甕星』の力で顕現した星の機関銃を繰り出していたのだ。
目には目を、連続攻撃には連続攻撃を。勇美はそう踏んだのであった。
そして、機関銃からは星の乱射が始まる。それらは跳流の蹴りの乱撃へと向かっていったのだ。
「ほう、打ち合いか。面白くなったのう♪」
跳流は乱打を放ちながら、弾む声でそう感想を述べた。
そして、蹴りと星の弾による合戦は始まったのだ。蹴撃と弾丸は空中でぶつかり合い、次々とそこかしこに爆ぜが生まれていたのだった。
勇美は完全に機械から放出される産物に攻撃を任せている。対して跳流はその生身の脚で立ち向かっていたのだ。しかも裸足である。
故に負担は断然跳流の方が上……の筈であった。だが。
「ちょっとヒリヒリするかのう」
そう愚痴る跳流には余り今の状況を苦にしている様子はなかった。さすがは強靭な肉体を持つ妖怪故の事であろう。
「う、あんまり効いてなさそう……」
勇美は呆気に取られながらそう呟くしかなかったのだった。
その後も連撃の攻防は続いていたが、互いに疲弊してしまったので打ち止めとなったのだ。
生身で打ち込んでいた跳流は勿論、勇美も機関銃からエネルギーを発射するに至り、自分の霊力を消費しているのだ──断じて無限の力ではないのだ。
そして、先程の激しさが嘘のように収まり、静けさが辺りに存在していたのだ。
だが、その静けさは正に『嵐の前の』なのであった。
「わしの攻撃はまだ終わってはいないぞ」
跳流
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