第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第54話 虫の皇
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(この話には、勇美とサブキャラを除いたオリジナルキャラが登場しますので、そういうのが苦手な方はご注意下さい)
人里の畑にバッタの群れが襲撃しかけた所を、その後を追って草原までやって来た勇美と依姫。
そして、そのバッタをけしかけた何者かと対峙する二人であった。
その者の容姿は茶髪のショートヘアの少女というものであった。この瞬間、緑髪のリグルとは別人だと分かったのだった。
その事を知った勇美は言う。
「ごめんなさい、人違いでした……。これにて失礼します」
「そうか……」
その者もどこか申し訳なさそうに返した。
そして、哀愁漂う雰囲気を醸しながら、勇美はそそくさとその場を後にするのだった。
「って、違う!」
だが、完全に退散する前にノリツッコミと共に勇美は踵を返してその者の前に戻って来るのだった。
「用は済んだのではないのか?」
その者はやや呆れたように勇美に指摘した。
そう言われて勇美は、大きく深呼吸をしてから言い切る。
「そんな訳ないでしょう! 人里の畑を襲う妖怪を追ってここまで来たのですから!」
「成る程のう……やはり事はそういう流れになってしまうのか……」
そう、その妖怪少女は何処か憂いを帯びながら呟いた。
そんな様子の妖怪に、勇美は意気込みながら言い切る。
「そういう訳です。あなたを人里の畑を襲わせないように、私が退治しに来たという事です!」
その勇美の様子を見ながら、妖怪は感心したように言う。
「お主、勇気があるのだな。そういう者は嫌いではない」
「では、始めますか。弾幕ごっこを」
勇美はいても立ってもいられないといった様子で妖怪をせかす形となっていた。
無理もないだろう。この勝負が勇美にとって初の妖怪退治となるのだから。
だが、当の相手の妖怪は実に落ち着いた様子を見せていた。
「まあ、待つのだ。勝負の前に『わし』に名乗らせてはもらえぬだろうか?」
「『わし』?」
明らかに不釣合いな一人称に、勇美は思わず反復していた。
そして勇美は、誰か他の老人か誰かが、この妖怪少女の側にいて代わりに話している等の可能性を考慮した。なので、確認の為に質問をする事にした。
「この場に他に誰かいるって事はありませんよね?」
「いや、わし一人だけじゃ」
これで確証されたのだ。他の者はここにはおらず、更には少女の口から鈴の鳴るような声色と共に『わし』の一人称の台詞が飛び出していたのだから。
そして、その妖怪少女の他のどこか年寄り臭い口調。
詰まるところは……。
「『わしっ娘』って事ですね〜♪」
そう言いながら勇美は恍惚の表情を浮かべていた。こんな嬉しい事は中々ない。
「勇美、何ほころんでいるのよ?」
対して、理解出来ない依姫は勇美にそう言うのだった。
「分か
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