第十一話〜別離〜
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兵卒が玉座に駆けこんできた。
「ほ、報告いたしますっ!」
「何事だ!」
その様子から尋常ならざることがもたらされるであろうことを予知した冥琳は、表情を引き締めるといち早く反応した。
「しゅ、朱将軍が目を覚まされたようです!」
「何っ!?」
一同の表情に喜びの感情が表れる。
しかし何か様子が変だ。
何故こうにも切迫しているのだと。
そう感じた雪蓮は兵卒にたずねた。
「目を覚まされた『ようです』って何かしら?確認していないの?」
「っ!」
一瞬口を開こうとしたが、そのまま口を噤んでしまう。
様子を察した雪蓮は厳格な声音で再度問う。
「一体何が起きた」
「……はっ。…私が先刻警羅をしていますと、朱将軍の部屋を警備していた者が倒れているところを発見いたしました。急いで部屋の中を確認しますと……」
「………どうだったの?」
雪蓮の勘は凶事を指していた。
それでも問わねばなるまい。個人の感情を理由に情報を聞かないのは、上に立つ者として落第だ。
「既にそこには朱将軍の姿はありませんでした。状況から察するに、恐らくは警備の者たちも朱将軍によって意識を奪われたものかと…」
そう言って、兵卒は懐より書状を取りだすと、雪蓮に手渡す。
それを受け取るや、すぐに眼を通す雪蓮は目を見開く。書状を握る手は小刻みに揺れていた。
すっと手からすり抜けるようにして落ちていく書状。
その内容を見てしまった祭は思わず声に出してしまった。
「…出奔じゃと……?」
『我処不在此処』
―私の居場所はここではない―
それは明確な出奔を示す一文だった。
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