第十一話〜別離〜
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「朝廷より使者が参った」
その桃蓮の言葉に周囲は表情を強張らせる。
もしや造反の心がばれたのか。
「塩の不法製造について発覚した。どうやら古狸に尻尾を掴まれていたようだ」
幸いなことに天下への野望に関しては発覚していないようだ。
それでも、これはれっきとした漢王朝への反抗。故に皆処分を覚悟していた。
「本来ならば軍権、そして領土も没収のところなのだが、黄巾党の討伐に尽力したことが評価されたらしい。我々は廬江へと飛ばされるだけで済む。尚、監視役には袁術が就くそうだ」
その言葉に周囲は多少なりとも安堵の息を漏らす。
領土さえあれば、再起はいくらでも図れるのだ。しかし次の桃蓮の言葉に、思わず皆が絶句してしまう。
「それともう一つ。孫文台の隠退。それが孫家を存続させる条件だ、とのことだ」
「何じゃと!?」
絶句する中、祭が驚きの声を上げる。
桃蓮はそんな祭を見やり、そして言う。
「しかしな、祭よ。私はこうも思うのだ。孫文台は先の戦で完膚なきまでに叩き潰された。最早『死んだ』と表現しても差し支えないくらいにな。御覧の通り右足もこの様よ」
そう言って自嘲気味に自らの右足を指す。
「ならばこれを機に、次代に道を譲るのが正しい選択ではないか、と。そう思っていた矢先に朝廷からこのような書状が来たのだ」
「堅殿…」
「祭や焔には引き続き若い者たちの面倒を頼むことになる。だが私は…少し早いが一抜けさせてもらおう」
その表情に浮かぶ感情は悲哀か無念か、はたまた両方か。とにかく桃蓮の言葉に本心はあれど、それが全てではないようだ。
「孫伯符、前に出よ」
「っ…はっ!」
桃蓮の指名に雪蓮は前へと踏み出す。
そして江東の虎と相対する。それでも雪蓮は強い輝きを以て、鋭い桃蓮の眼光を跳ね返す。
「ふっ」
ふと桃蓮が笑みをこぼす。
「いい目をしている。存外私の判断も間違ってはいないものだったのかもな」
一瞬後には元の引き締まった表情へと戻っていた。
「『南海覇王』…これをお前に託す。これを以て仲間を護れ。民草を護れ。そのために思うがままに振るうがいい」
「はっ、孫文台様。この孫伯符、謹んでお受けいたします」
「…うむ」
諸将が雪蓮に対して臣下の礼を取っている時、一つの人影が、玉座の間の陰から離れていった。
ここに継承は終わりを告げ、新たな時代が始まろうとしていた。
明るい行く末を確信していたわけではないにしても、それでも皆が新たな希望を胸に抱いていた。新しい孫呉が誕生したのだ。
その刹那、切迫した表情で一人の
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