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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
臨時会〜アスターテ会戦事後処理〜
796年3月上院安全保障委員会にて
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原則、統帥の原則の通り統合作戦本部の助言に従い、議長と共に大方針を定め、艦隊総司令部に一任すると、その点につきましては最高評議会議長、及び国防委員会においても徹底された方針であります。
無論、今回の戦闘結果を踏まえ、教育体制、再検討を行ったうえで、確りと自由惑星同盟の全ての国民の皆様に安全、安心に暮らしていただける安全保障体制を構築することが私の大きな役割の一つである。
その為に私が政治生命をかけて取り組むべき重要な職責であると申し上げております。
ですがそれは、私一人の力で行うものではありません。同盟軍、構成共和国軍、そしてそれを支えるすべての国民の皆様、その協力に応え――」



 自由惑星同盟議事堂の中継モニターを二人の中年男性が眺めている。
「あの御老人、大したしたものだなトリューニヒトの奴が原稿の棒読みに徹している」
 財務委員長、すなわち同盟の金庫番であるジョアン・レベロと人的資源委員長のホアン・ルイである。
「余計な事を言ったら手ひどい目にあるのはわかっているだろう。‥‥‥あのお爺ちゃん達を怒らせちゃぁたまらんよな。私なら頼まれたって安全保障委員会はごめんだ」

「財務とていい加減なことは言えんがあそこまで白熱するのは税金の話くらいだよ」
 レベロが自嘲する通り財務は嫌われ者だ。政治家は金を配るのが仕事だが、財務は支出は絞り、歳入をあげようとする。
 軍事費!即ち無制限の出費!と国家防衛戦争に際して叫ぶのにはかのイゼルローン要塞にも勝る堅固な神経が必要である。

「人命を取り扱っているんだ、それでも感情が入れ込むのはあそこさ」
 いまいち理解しかねる、と言った顔のレベロにホアン・ルイは嘆息した。
 ハイネセンの金融界で活躍し、富裕層と中産層の支持を得る自由党きっての政策通であるが都市から出たらその影響力は及ばない、典型的な都市政党の首魁である。必要な人物ではあるが彼が議長になる日はないだろう。
 かくいう自分は労農連帯党、いわゆる左派政党のトップだ。労働者と兵隊はほぼ同じ層である以上、どうしても軍事、というよりも戦場生活にある程度の知見が求められる立場である。そして労働者需要の高い【国境】についても。
 連立政党としては保守からすれば同じ左派であるが政策的には――かりに戦争が有利になればますます相容れない。皮肉な事ではあるが防衛戦争という手に負えない怪物と戦っているからこそ肩を並べている。
 そうした意味ではヨブ・トリューニヒトが属する保守政党、国民共和党は中道右派路線であるが部分的には連帯労農党と話せるのが皮肉な話である。
 この三政党を主軸に小規模政党を取り込み下院の過半数を勝ち取った『民主共和連盟』による政権。
 その恐るべき敵こそがこの上院……『同盟弁務官総会』だ。
 恐るべきことに
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