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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
臨時会〜アスターテ会戦事後処理〜
796年3月上院安全保障委員会にて
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たが下院が【同盟市民】の様々な利益代表者であれば上院は【同盟加盟国】の利益代表者であることには変わりはない。
――故にここで手を挙げるのはアスターテ共和国利益代表である男だ。
アイランズ委員長は耳をハンカチで拭き、唇を舐めると重々しく名を呼んだ。
「‥‥アレークシン・リヴォフ君」
のそり、と立ち上がった者は巨体であった。その造作は何もかが太く、厚い。眉も。髭も、目も、唇も、七十余年の人生が刻んだ皴すらも太い。その上、年齢にそぐわぬ体躯は分厚く、太い。
唯一、細いのはわずかに頭にへばりついている髪の毛だけだ。
「【民主主義の縦深】のリヴォフである!!議題となっておりますアスターテにおける軍事行動を中心に質疑させていただこう!!」
当然ながらその声は野太く、音量はフライングボールに熱中した大学生が他人の金で貪る焼肉消費量のそれである。
隣に座る黒人の議員が苦笑しながら耳を塞いでいる。
「御承知の通り堅固にして強力な帝国軍の兵站拠点であるイゼルローン要塞が専制帝国主義者共に設置されて以来!!悪質で深刻な侵攻攻撃がイゼルローン回廊近郊で相次いでおります!!
インフラの被害のみならず略奪、拉致、婦女への暴行など、広範囲かつ甚大な被害が及んでいるのは御承知のとおり!!」
発言に力が入っているのはこの男がアスターテ共和国政府の代弁者であり、尉官、佐官時代には輸送艦の陣頭指揮を執っていた歴戦の軍人だからである。時には戦地となる地域住民の避難や戦後の避難民の帰還などもこの目で観てきた男だ。
アスターテ共和国はイゼルローン回廊近郊にある。会戦規模の戦闘はめったに起こらないが帝国軍の【威力偵察】を受ける事はよくある話である。議員としては二期目、10年務めているベテランだ。2年後の選挙にも出馬するつもりではないかといわれるほどに矍鑠としたマッチョ老人である。
「国民の安全を保障する万全の体制を構築することが喫緊の課題である!!」
艦隊総司令部後方主任参謀を務め少将で退官したのちは故郷、アスターテ共和国の国防長官を務め、同盟弁務官として10年目を迎えている。
「このね!極めて重要性の高い国家安全保障分野に関しまして、責任者となられたのがヨブ・トリューニヒト――あ〜委員長であります!
大変失礼ながら、委員長には国防委員会の長としてその資質があるのか改めて質す必要がある!
何故なら!アスターテ会戦において【国防委員会が主導し帝国戦力を撃滅する】と広報において説明していたことをあげる!
だがその結果はどうか!アスターテ星系において投入した兵力の56%もが失われております!
つまりは常備艦隊を完全動員した際の12%が失われたのです!」
「甚大な被害だよ!」
エル・ファシル共和国選出議員のサウリュス・ロムスキー同盟弁務官
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