第百二話 家臣にしたい者その三
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「守りに徹してな」
「そして、ですな」
「そのうえで、ですな」
「戦いますな」
「凌いでいきますな」
「さしもの山中殿もじゃ」
武勇も采配も優れかつ幾ら傷付いてもその傷がすぐに癒えて戦場に戻って来る様な彼でもというのである。
「兵がいなくてはどうじゃ」
「戦えませぬな」
「流石にそうなりますな」
「山中殿と十人衆だけでは」
「とてもですな」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「凌ぐぞ、兵がなくなれば尼子殿も言って来る」
「退けと」
「主君に言われては山中殿も退きますな」
「そうしますな」
「山中殿は忠義一徹な方ですし」
「主の命に逆らう筈がない」
絶対にというのだ。
「だからな」
「その時は下がりますな」
「つまり山中殿が下がるまで」
「それまで戦いますな」
「その様にしていくぞ」
こう言ってだった、元就は実際に守りに徹した。山中は自ら先頭に立ち元就を果敢に攻める。十人衆も続くが。
守りに徹した元就の陣には近寄れない、元就は柵も空堀も備えさせていたので尚更だった。それでだった。
元就は戦の流れ、果敢に攻める山中の軍勢と確かに守る自身の軍勢の戦を見つつ鋭い声でこう言った。
「このままじゃ」
「戦いますな」
「そうしますな」
「今は」
「うむ」
まさにというのだ。
「相手が下がるまでな」
「左様ですな」
「このまま守りを固め」
「こちらは攻めず」
「そうして戦いますな」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「凌ぐぞ」
「それまでの戦でありますか」
「敵が退くまで」
「そうした戦ですか」
「うむ、攻めて打ち破る戦もあれば」
元就はこれまでの戦から話した。
「そうした戦もある」
「敵を退かせる」
「それまで待つ」
「そうした戦もありますな」
「戦の中には」
「戦は一つではない」
そうしたものだからだというのだ。
「攻めるだけではない」
「守り下がらせる」
「そうした戦もありますな」
「そしてそれがですな」
「今の我等の戦ですな」
「そうじゃ、では守るのじゃ」
こう言うのだった。
「要は陣を破られねばよい」
「左様ですな」
「そして間違っても殿は討たれない」
「そうなることですな」
「わしが討たれるとな」
元就は自分が総大将であることからも話した。
「やはりな」
「それで負けですな」
「そうなりますな」
「自然と」
「その時点で」
「そうじゃ、戦は総大将が討たれるとじゃ」
まさにその時点でというのだ。
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