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戦国異伝供書
第百二話 家臣にしたい者その二

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「山中殿は寡兵でもじゃ」
「臆することはない」
「そうした御仁ですな」
「だからですな」
「それで、ですな」
「我等も用心して戦うことですな」
「左様、陣を堅固にしてな」
 そうして守ってというのだ。
「槍を出し弓矢も放ち」
「鉄砲もですな」
「あれも使いますな」
「そうしますな」
「鉄砲は一度撃つと次に撃つまで時間がかかるが」
 それでもとだ、元就は話した。
「あれは音がするな」
「はい、非常に」
「凄まじい音がします」
「その音が敵兵達を驚かしまする」
「当たると相手を倒すだけでなく」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「ここはな」
「はい、それではですな」
「鉄砲も使いますな」
「そして山中殿の軍勢と戦う」
「そうしますな」
「うむ」 
 まさにというのだ。
「その様にする」
「では」
「山中殿の軍勢が来れば」
「その時はですな」
「戦いますな」
「その様にする」
 こう言ってだった、元就は自身が率いる軍勢即ち毛利家の本陣の守りをしかと固めそのうえで山中と十人衆の軍勢が来ることを確信して彼等を待っていた。
 すると程なくしてだった。
「三日月を飾り鹿の角がある兜です」
「あの兜間違いありませぬ」
「山中殿です」
「軍勢の先頭に立っておられますな」
「うむ、確かにな」
 元就はその彼を見た、確かにそこには三日月を前に飾り鹿の角の飾りを付けた兜を被った引き締まった顔の若武者がいた、そして。
 その後ろにそれぞれ精悍な顔立ちの者達がいる、元就は彼等を見て言った。
「山中殿にじゃ」
「十人衆ですな」
「やはり来ましたな」
「と、なるとですな」
「これよりですな」
「攻めて来る」 
 山中、彼はというのだ。
「だからな」
「それ故にですな」
「我等としてはですな」
「戦いますな」
「これより」
「攻めてはならぬ」
 元就はこのことは強く言った。
「よいな」
「はい、それは山中殿が強いからですな」
「攻めに強いからこそですな」
「それで、ですな」
「敢えて攻めず」
「守りに徹するのですな」
「左様、先程言った通りにな」
 まさにというのだ。
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