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竜の子
プロローグ
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[1] 最後
当方は、生まれながら枯れていた。

人が喜ぶ時に笑えない。悲しむときに涙を流せない。きっと、人間らしい心と言うものを持っていなかったのだろう。
生まれ育った村では、不気味な子供だと言われた。
家族は幼くしてモンスターに喰われた。
モンスターが人間を襲うのは当たり前のことだ。親が死んだにも関わらず涙を流さない子供を周りはさらに不気味がった。引き取った剣の師でもあった養父も、少しして病で死んだ。村に居場所はなく、当方は村を出た。道中、モンスターに襲われたが家にあった剣と数本の短剣を用いて殺していった。


そして、竜に出会った。黒く巨大な竜。いままで殺してきたモンスターとは明らかに違った。身体は40Mほどはあっただろうか。圧倒的な存在感と草木を枯らす障気を撒き散らしていた。宝玉のように輝く碧眼は漆黒の体も相まって美しく、恐ろしかった。当方は逃げることはできず、結局殺し合った。
死ぬことは怖くなかったが、ただ喰われるよりは自分の全てを使いきってから死のうとした。

だが、当方は死ねなかった。
気付けば、血だらけまで黒竜の骸の上にいた。右手で掴んでいた剣は刀身が折れ、養父から譲られたミスリルの鎧は砕けていた。辺りは、竜の障気と口から放つ黒炎で草木が残らないヒドイ有り様だった。黒竜の骸は翼をもがれ、腸を裂かれと無惨な物だった。
ふと、口の中で鉄のような味がした。身体中が血にまみれているのだから口に入ったのだろうと思った。が、竜の死体を見て気付いた。他の臓物が残っているにも関わらず、心の臓がなくなっていることを。自分の体を見れば傷が何一つないことを。赤い瞳があの竜と同じ碧眼になっていることを。頭のなかに知識を流し込む眼鏡の魔具を掛けていることを。一呼吸する度に、膨大なマナが作られていくことを。
当方は、非人間になっていた。

旅の途中、いつか人ではなくあの黒竜と同じ人喰いになることを知った。体を治す方法を知るため冒険者の町 オラリオに行った。世界の中心であり、天界より数多の神々がいる都。そこには医神もいる。全知の存在なら方法を知っていると思った。
当方は、ファミリアに入りモンスターを殺し続けた。オラリオで頂点に立つファミリアなら情報を集めやすいと思った。
だが、治すことは出かなかった。
結局、当方は半人半怪。ただの化物。仲間も友もいない孤独な男。誰かを傷つけることしか出来ない男だった。



『違うわ、あなたは優しくて温かい人。自分よりも誰かを大切にできる人。ただ、少し自分を出すのが苦手なだけよ』

ベッドの上で白髪の女性が体を起こして、当方に優しく言う。腕は細く、頬も痩け生来の肌の白さも相まって生気を感じられない。それでも微笑む。

『この子だって、あなたのように強くて優しい子に育つわ』

腕に抱かれた赤ん坊
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