知らない場所と世界に来ていた、イシュヴァールの診療所
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の子供が」
夕方になって雨が緩くなってきた頃、お客さんかと思ったら怪我をした病気の人がやってきた、この男の人は医者なんだと女は驚いた。
きっと、いい人なんだろうと思うのは治療代は金があるときでいいからと言うのを聞いたからだ。
患者は踏み倒しとかしないのだろうか、患者の服装は作業着というか、かなり汚れている、日雇い労働者みたいだと女は思った。
会話の中にスラムという言葉が出てきたので、ここは日本ではない、不安な気持ちになったのはいうまでもない。
お茶と食事、その日は泊めてもらうことになった、見ず知らずの人にいいのかと思ったけど甘えることにした。
何か訳があるのだろうと医者は思った。
病人の為のベッドは寝心地がよくないだろうが、我慢して貰うことにしたのだが、寝る前に水差しを持って行こうとしてドアの向こうから聞こえてくる声に思わず手が止まった。
ドアの向こうから聞こえてくる声は啜り泣くような声だったからだ。
「再婚しようと思うの、今更だけどね」
自分を見る母親の目が、どこか後ろめたく感じるのは気のせいだろうか、気を遣う事はない、幸せになるんだから自分は賛成だと言うと安心したような笑顔が返ってくる、だが、次の言葉には賛成できなかった。
一緒に暮らしましょうと言われて、すぐには返事ができなかった。
いい年した、三十路を過ぎの娘がいたら相手も気を遣うから今まで通り、自分はアパートで暮らすというと、母親は首を振った。
「あちらにもね、息子や娘がいるのよ」
「だったら、尚更、気まずくなったら新生活にも支障がでるでしょ」
「でも、仕事を辞めたんでしょう、一緒に暮らしても」
「祐子さんには感謝してる、母親だと思ってる、本当の」
友人の娘というだけで、血の繋がりのない自分を今まで何度でも助けてくれたのだ、感謝しても足りない、なのに自分の母親ときたら。
「そっくりね、そういうときの顔、でも困った事があったら」
「家族だよ、離れて暮らしていてもメールや携帯で連絡取れるでしょ」
「スマホにすればいいのに、ガラゲーなんて」
「あのね、使用料は祐子さんが払っているんだよ」
学校を卒業して、社会人になってもだ、今、住んでいるのは祐子さんが経営しているアパートなので家賃なんて、ただ同然だ。
たまに、母親である彼女ははモーニングコールをかけてくる、起きたばかりの寝ぼけた声を聞くのが楽しいらしい。
目が覚めたとき、優しい声を思い出した、朝だよ、起きて、今日の仕事はどう、時間があるなら朝ご飯一緒に食べない、近くのマックでホットケーキはどう。
もう、あの声を聞く事はできないのかもしれない。
ここは一体、何処なのかわからない、不安でたまらなくなった。
だが、何故か、涙
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