第五章
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「これはです」
「残念ですが」
「仕方ないです」
「この状況は」
「全く、嫌なものだよ」
区目は実に忌々し気に謝罪会見に赴こうとした、公の場に出るとしおらしい素振りになったが席に着くとだった。
謝罪の演技をしようとした彼にある者が携帯を出して言ってきた。
「区目さん、この動画ですが」
「はい?」
「これさっきのですよね」
そこには彼の先程の不平不満を漏らしている姿があった。
「そうですよね」
「そ、それは」
「貴方全然反省していませんね」
「いや、それはその」
「これもうユートーブとニモニモにあげました」
「何、それ」
「インターネットの動画サイトですよ」
ユートーブもニモニモもというのだ。
「今凄い勢いで拡散されていますよ、世界中で」
「そ、そんな」
「貴方がここで謝罪されても」
それでもというのだ。
「本心じゃないって思って見ていたら」
「おい、何時撮れとか言った」
「貴方は言ってないです」
「じゃあプライバシーの侵害だろ、訴えるぞ」
「これ報道の自由じゃないんですか?」
「違う、それは俺達マスコミのものだ」
区目は我を忘れて叫んだ。
「お前等庶民が持つものじゃないだろ」
「私はこの場所の職員ですが」
「じゃあ庶民だろ」
「庶民が情報発信したら駄目ですか?」
「それは俺達の権利だ」
「報道することもですか」
「そうだ、それを勝手にするな」
区目は口から泡を飛ばし顔を真っ赤にして叫んだ。
「訴えるぞ」
「どうぞご勝手に。ですが貴方の今のお姿も全部ネットに拡散されています」
「何!?」
「これでどう謝罪されますか」
「くっ、それは」
「さて、どうされますか」
こう言ってそうしてだった。
携帯を出した彼は不敵に笑った、そしてネットでは。
区目への怒りがこれ以上までになく爆発し。謝罪会見すら出来なくなりあたふたと逃げた彼を延々とだった。
ネットに流れた動画を観て批判し続けた、区目は公の場に一切出られなくなったどころか住所まで特定され。
家にまで怒れる群衆が連日連夜押し掛け精神的に追い詰められ家族も逃げ出して生活は完全に崩壊した。
それでだ、酒に溺れある日倒れ死んで暫く経ってから腐乱死体となって発見された。その彼の死を悲しむ者は一人もおらず無縁仏に入れられ遺産は当然彼の手には渡らず逃げた家族も相続権を放棄して彼が忌み嫌っていた日本政府の手に渡った。そして家も取り壊された。後に残ったのは彼の本性を映し出した動画達だけだった。これだけは永遠に残り区目は死んでも批判の対象になり続けた。それが区目鉄矢という男の残したものだった。
出した本性 完
2020・5・13
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