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山爺の声
第三章

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「行くのじゃ」
「そうしてですか」
「山爺を懲らしめよ、ただな」
「ただといいますと」
「山爺自体を撃ってはならぬ」
 信長はそれはせぬ様にと告げた。
「よいな」
「あやかしの征伐はですか」
「別に人を襲って喰わぬしな」
「気を失わせるだけなので」
「そこまでは及ばぬ」
「ですな、例えあやかしといえどです」
 ここで丹羽長秀が言ってきた。
「人を害するのでなければ」
「成敗するまではな」
 そこまではとだ、信長は丹羽に答えた。
「及ばぬ」
「だからですな」
「懲らしめるだけでよい、そしてその懲らしめ方はな」
「勝三郎殿にですな」
「任せる、見事この仕置きしてみせよ」
 信長は池田に告げて彼に行かせた、そしてだった。
 池田は供の者達を連れて山に向かった、その時にしっかりと信長が命じた通り鉄砲を持って行った。その数は三丁だった。
 その鉄砲達を見てだ、池田は道中笑って言った。
「これで大丈夫じゃな」
「といいますと」
「ことは果たせる」
「あやかしを懲らしめられますか」
「うむ、あやかしがどの様な大声を出してもな」 
 その出し合いを挑んでもというのだ。
「これさえあればな」
「よいですか」
「あやかしに大声で勝てますか」
「それが出来ますか」
「そしてな」 
 さらにというのだ。
「懲らしめて今後もな」
「あやかしに悩まされぬ」
「大声の出し合いを挑まれても」
「左様でありますか」
「そうじゃ、ただ殿も言われたが」
 池田は供の者達に信長の言葉も話した。
「あやかし自体を撃ってはならぬ」
「それはしませぬか」
「鉄砲を持って行っても」
「それでも」
「撃つのは空でよい」
 即ち誰も狙うなというのだ。
「そちらでな」
「空ですか」
「そちらに向けて撃つ」
「それでよいですか」
「左様、間違ってもあやかしに撃つでない」 
 山爺自体にはというのだ。
「そのことはよいな」
「わかり申した、それではです」
「その様に致します」
「山に入ってあやかしが出たなら」
「その様にな」
 こう供の者達に言ってだった。
 池田は供の者達を連れてそうして山に入った、そのうえで中を進んでいくとだった。
 やがて前からどしんどしんという音を立てて人の倍はありそうな高さの大男が出て来た、服は粗末なもので顔には大きな一つ目があり一本足である。髪の毛は一本もない。池田はその大男を見て供の者達に言った。
「あれがな」
「間違いないですな」
「山爺ですな」
「あの一つ目に一本足の大男が」
「左様、では受けて立つぞ」
 あやかしの申し出のと言ってだ、そしてだった。
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