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山爺の声
第二章

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「回り込まれるので」
「左様か」
「困ったものです」
「では鉄砲はどうじゃ」
 ここでだ、信長は言った。
「あれの音なら」
「鉄砲ですか」
「あれの音は凄いな」
「殿が戦の場で多く使われていますね」
「あれは弾で敵を撃ってじゃ」
 それにとだ、信長は帰蝶にその鉄砲の話をした。
「音でもな」
「それでもですか」
「敵を驚かせるからな」
「よい武器ですか」
「あれを数百も戦場に持って行って使えばな」
 そうすればとだ、信長はさらに話した。
「これだけ強いものはない」
「だから用いておられますか」
「左様じゃ」
「そうですか、では」
「うむ、少し試してみるか」
「山爺に対して」
「人を襲わぬのはいいが大声の出し合いで気絶させるのは同じじゃ」
 人を襲うことと、というのだ。
「だからな」
「それを止める為に」
「それを放ってはおけぬ」
 絶対にとだ、信長は言い切った。
「わしは美濃の主になった」
「それならですか」
「ことを収めねばならぬ」
「相手があやかしであっても」
「あやかしでも民の迷惑になるならな」
 それならというのだ。
「ことを収める」
「それでは」
「すぐに人をやるか」
 若しくはとだ、信長はさらに言った。
「わし自身がな」
「行かれて」
「そしてことを収める」
「そうされますか」
「では誰が行くか考えるか」
 こう言ってだった、信長はその美濃の北の山に送らせる者を選びにかかった、そして池田恒興に対して言った。
「勝三郎、お主が行け」
「それがしがですか」
「うむ、行け」
「殿、それがしは声は」
 池田は主に命じられたがここで言った。
「声は」
「権六と比べるとじゃな」
「全くです」
「ははは、権六の声の大きさは当家一じゃ」
 信長もその柴田を見て言う。
「これだけの声の大きな者はおらん」
「殿、何でしたらそれがしが」
 その柴田も言ってきた。
「ここは」
「いや、勝三郎じゃ」
「この者をですか」
「行かせる」
「それでは」
「それでじゃ」
 信長は池田にさらに声をかけた。
「お主鉄砲を持って行け」
「鉄砲をですか」
「二つか三つな」
「供の者達を連れて」
「供の者達にも持たせてな」
 そのうえでというのだ。
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