第二章
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「相変わらずな」
「そうであるな」
「うむ、しかしな」
「それでもか」
「そうじゃ、わしはそれでもな」
「弁えておるな」
「だから今宵もな」
店を出てから向かうその先にいる女もというのだ。
「そうした者だ」
「そうか」
「うむ、そこも変わらぬ」
「ならいい、しかしお主また文屋に書かれておるぞ」
「そっちも変わらないな」
「しかもポンチ絵でもな」
「真のことならいい」
伊藤は井上にもこう言った。
「それならな」
「しかし偽りはだな」
「文屋は好き勝手書く」
伊藤は眉を顰めさせて言った。
「この前もそうだった」
「お主が誰かの妻君に手を出したとかな」
「けしからん、わしはその様なことはせぬ」
「一切だな」
「人のものに手を出すか」
こう言うのだった。
「一切な」
「うむ、わしもな」
「わしがそんなことをする男とはだな」
「わかっておる」
伊藤に笑顔で答えた。
「そんなことは絶対にせん」
「そうじゃ、だからな」
「こよいもだな」
「相手はな」
それはというのだ。
「弁えておる」
「そのお主がああしたことをするなぞな」
「絶対にないわ、文屋は色々書くがな」
「あの者達は性質が悪いのう」
「お主についても色々書くしな」
「わしは一切気にかけてない」
井上は豪語さえした。
「何もな」
「そうであるな」
「三井の番頭だの何だの好きに書けばいい」
「思う様にか」
「わしは一切言わぬわ」
「日本の文屋に何を言われてもだな」
「わしのことをな、しかしな」
それでもとだ、井上は伊藤に話した。
「他の国の文屋が日本についてどう書いているか」
「そして思っているかはだな」
「気にしている」
こちらのことはというのだ。
「かなりな」
「それが日本への動きになるからな」
「それは別だ」
国内の記者達の書くことはというのだ。
「全く以てな」
「お主のことをどれだけ書いても構わぬが」
「日本のことはどうかだ」
そのことがというのだ。
「問題だ」
「日本の文屋も日本のことを書くがな」
「あれは駄目だ、何もわかってない」
日本の彼等についてはこうも言った。
「全くな」
「だからか」
「そうだ、日本のことを書いたものでもな」
「お主はだな」
「日本の文屋は気にせぬ」
一切と言い切った。
「そういうことだ」
「成程な」
「それはお主もだな」
「そうだ、事実なら好きに書け」
伊藤は笑って言った。
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