第五章
[8]前話
庄屋が中心となって神主からも話を聞いて祭りを行いそうしてからだった。五平は太吉に対して尋ねた。
「何で祭りをするんだ」
「ああ、そのことか」
「急に」
「年取った熊を仕留めただろ」
太吉は五平に答えた。
「だからだ」
「それでか」
「ああ、年取った熊は確かに化けものになる一歩手前だが」
それでもというのだ。
「それだけに力が強くてな」
「確かに凄い大きさだったな」
「その力から山の神様の使いになるんだ」
「そうだったのか」
「それでその魂をな」
熊のそれをというのだ。
「神の国に送り返すんだよ」
「そうするのか」
「そうだ、これからな」
「そんな祭りがあるんだな」
「おめえは知らねえな」
「聞いたこともなかった」
実際にとだ、五平は祖父に答えた。
「こんな祭りは」
「そうだな、おらもおらが子供の頃にやっててな」
「庄屋さんとそんな話をしてたな」
「殆ど覚えてねえ」
「そうか」
「ああ、けれど神様の使いなんだ」
仕留めた年取った熊はというのだ。
「だからな」
「ちゃんと祭ってか」
「魂を神様の国に送るぞ」
「そうした祭りか」
「あと山の天気が荒れるからな」
太吉は孫にこうも話した。
「あの山には暫く入らねえぞ」
「山が荒れるか」
「ああ、神様の使いを仕留めたからな」
「だからか」
「昔から神様の使いを仕留めたら天気が荒れるんだ」
その山のというのだ。
「だからだ」
「暫くあの山にはか」
「入らねえぞ、実際におらが子供の頃もな」
「山が荒れたか」
「おらのひい祖父さんがあの山とは別の山で年取ったでかい熊を仕留めてな」
それでというのだ。
「祭りをしてな」
「その山も荒れたか」
「そうだ、だからその山にもな」
「暫く入らなかったか」
「それであの山にも入らねえぞ」
こう言ってだった、そのうえで。
太吉は五平を祭りに連れて行った、そしてだった。
祭りの後で熊を仕留めた山を見た、その山は実際に激しい雨が降り注ぎ強い風が始終吹いていた。今も伝わる江戸時代中頃の古い話である。
熊祭り 完
2020・2・20
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