第二章
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「熊はわしがやる」
「村の人達に言われたあれはか」
「そうだ、わしがやる」
こう言うのだった。
「おめえは撃つな」
「おらじゃ無理か」
「ああ、多分な」
「そんな相手なんだ」
「おめえはまだ仕込んでる最中だ」
太吉が五平に顔を向けて真剣な顔で話した。
「兎や狐や狸なら充分だ」
「的が小さくてすばしっこいから狙いにくいぞ」
「違う、熊はまた違うんだ」
「すばしっこいとかじゃないのか」
「そうだ、ましてや年取った熊はな」
今回の獲物の話もした。
「化けものの一歩手前になる位だとな」
「違うか」
「もうとんでもなく大きくてな」
それでというのだ。
「弾も下手なところに当てるとな」
「仕留められないのか」
「そうだ、それこそ眉間か口の中か」
そうしたところにというのだ。
「当てないとな」
「死なないか」
「兎や狐が襲って来るか」
こうもだ、太吉は五平に言った。
「狸も」
「いや、おら達を見たら逃げる」
そうするとだ、五平は祖父に答えた。
「あと鹿や猿もな」
「そうした相手はすばしっこくでも狙える」
「襲って来ないからか」
「そうだ、しかし熊は違う」
この獣はというのだ。
「あの獣は襲って来るな」
「そだな、あいつは」
「襲って来る相手に撃つのは簡単じゃねえんだ」
太吉は孫に真剣な顔で話した。
「怖いからな」
「それでか」
「ああ、その怖い気持ちを抑えてな」
そしてというのだ。
「撃つんだ、しかもその相手の眉間か口の中だ」
「そういうところを撃たないと駄目だからか」
「だからな」
それ故にというのだ。
「簡単なことじゃねえんだ」
「それでか」
「ああ、だからな」
「おらじゃ無理か」
「まだな、わしがやるのを見とけ」
熊を退治する場をというのだ。
「いいな」
「わかった、じゃあな」
五平は太吉の言葉に頷いた、そうしてだった。
二人は犬達と共に山の中を進んでいった、途中兎や鹿も見たが太吉は五平に言った。
「後だ」
「兎とかはか」
「ああ、今はな」
こう言うのだった。
「いいな」
「まずは熊か」
「一発で仕留めるが」
それでもというのだ。
「相手も馬鹿じゃないんだ」
「それでか」
「鉄砲の音を出したらな」
その大きな音をというのだ。
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