第四章
[8]前話
「怨霊となりまして」
「旧暦の一月二十四日ですね」
「つまり昨日に自分を騙して殺した島の人達に復讐しに来るのです」
「それで、ですか」
「はい、それでです」
まさにというのだ。
「今に至るといいます」
「そうなのですね」
「もう一つその代官を殺して逃げた人達が海が荒れていて」
「やはり波に飲み込まれてですね」
「亡くなった人達がです」
まさにというのだ。
「なったと言われています」
「二つの説があるのですね」
「どちらが真実かわかりませんが」
それでもというのだ。
「しかしです」
「出ることは出るのですね」
「そうなのです、今も」
「そうした経緯がありましたか」
まさにとだ、彼はまた言った。
「よくわかりました」
「そうですか」
「はい、ではまたここに来る時は」
「旧暦の一月二十四日はですね」
「外には出ません」
それはというのだ。
「夜は、といいますか」
「もうですね」
「昨日のその日には来ないです」
旧暦の一月二十四日にはというのだ。
「そうします、見れば今この旅館に来ているのは私だけですね」
「他の旅館も同じです」
「そうですね、では」
「次に来る時は」
「シーズンを選びます」
サガンは笑って言った。
「結婚して」
「そうされてですか」
「そうします、では旅館を出て」
「観光にですね」
「行かせてもらいます」
「もう出ないので安心して下さい」
女将はサガンに微笑んで話した。」
「そのことは」
「では憂いなく」
そしてとだ、こう言ってだった。
サガンは旅館を出て観光をはじめた、かつて読んだ川端康成の小説も思い出しつつそうした。そうして次は本当に妻と二人で来ようと思った。その旅は快適なものだった。ただ女将が言った昨日の夜の音は海難法師の声に違いないという言葉は忘れたかった。
海難法師 完
2020・5・17
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