第三章
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そのうえで寝ることにした、流石にもう二升空けるとかなりのもので何度もトイレに行っていたがその時も音を立てず。
外に暴風の様な音を聞きつつ海難法師の声だと思い身震いするものも感じた、そうして布団の中で寝たが。
翌朝起きると合わせて三升、ワインで言うとボトル一ダース分は空けただけあって酒が残っていた。それでだった。
彼は死ぬ思いで布団から出て頭痛に苦しみつつ朝風呂に向かった、そしてだった。
サウナと水風呂、湯舟を幾度も往復して汗をかいて酒を抜いた。それからだった。
和風の朝食を食べた、その後で女将に言われた。
「見ませんでしたね」
「外に出ませんでした」
サガンはこう答えた。
「一切」
「それは何よりです」
「はい、ただ」
サガンは女将に尋ねた。
「一つ聞き忘れていたことがありました」
「それは何でしょうか」
「その海難法師の具体的なことです」
このことをというのだ。
「姿を見たら死ぬと聞きましたが」
「昨日出てですね」
「それ以外のことは」
「はい、帆を付けた盥の様な舟に乗って海から来る江戸時代の恰好の男の人です」
女将はまずその姿から話した。
「聞く限りでは」
「そんな恰好ですか」
「それでこの伊豆を回っていきます」
「夜にですね」
「そうしていきます」
そうだというのだ。
「海難法師は」
「それで姿を見るとですね」
「死にます」
「それで昨夜はですね」
「申し訳ないですが」
それでもというのだ。
「静かにして頂きました」
「そういうことですね、お話を聞くと日本の怨霊の様ですね」
ここでこうも言った彼だった。
「その姿と力は」
「そうです、何でも昔伊豆に来た代官があまりにも酷く」
女将は今度は海難法師のはじまりの話をした。
「当時の島の人達がわざと海が荒れる日に島の巡礼を進めて」
「波に飲み込まれたのですか」
「それで死んで万歳ですが」
それでもというのだ。
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