第一幕その九
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「告白とかプレゼントとか」
「されたことはないですね」
「一度もね」
「そう思っておられるんですね」
「いや、事実だからね」
先生は疑っていない笑顔で言い切ります。
「本当にね」
「ですからそこをです」
トミーはそんな先生に呆れつつさらに言います。
「疑って」
「そしてかい?」
「動かれてはどうですか?」
「いや、そう言われてもね」
やはり笑って言う先生でした。
「僕はね」
「もてないんですね」
「女性には一生縁がないから」
「サラさんも全く違うこと言ってるよ」
「それはサラの誤解じゃないかな」
「やっぱり先生はもてないですか」
「そんなことは一度もないよ、恋愛の知識は文学での知識だし」
それで知っているというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「実際の経験はないしね」
「気付かなかっただけじゃないですね」
「僕もそれ位はわかるよ」
まさにという返事でした。
「自分がもてないことはね」
「本当に疑っておられないですね」
「全くね」
まさにというのです。
「僕は」
「そうですか」
「そう、そしてね」
さらに言う先生でした。
「僕は皆と一生仲良く。お世話になってね」
「日常生活のことはですね」
「暮らしていくよ」
「正直僕はこう思っています」
トミーは先生とここまでお話して完全に呆れた目になっています、そしてその目で先生に言いました。
「これは苦労すると」
「苦労するっていうと」
「ですから先生のそのことについて」
「いや、トミーも誰も苦労しないよ」
先生だけが思っていることです。
「僕は恋愛とスポーツには無縁だからね」
「ご自身はですね」
「だからね」
それでというのです。
「もうね」
「僕達も苦労しないで」
「平和に過ごしていけるよ」
「本当にもてないと思われていますか」
「事実は否定出来るかな」
「出来るものじゃないっていうんですね」
「そうだよ、例えば日本海を違う名前の海だって言っても」
例えそうしてもというのです。
「それは事実じゃないからね」
「日本海は日本海のままですか」
「他の呼び名にはならないよ」
それは決してというのです。
「例えどう呼んでもね」
「そして先生がもてないこともですか」
「事実だからね」
それ故にというのです。
「変わらないよ」
「全く、先生のこの考え変わらないね」
「もう最初から確信しているから」
「他のことは聞いてくれる人なのに」
「どういう訳かこのことだけは聞いてくれないから」
「僕達も困るよ」
「本当にね」
動物の皆もやれやれとなっています。
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