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戦国異伝供書
第百一話 出雲攻めその十

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「歳月は長く経ておるわ」
「こうした話をすること自体が証ですな」
「何よりのな、そして西には大友家があり」
「東には織田家が来ましたな」
「天下も変わった」
 その歳月の間にというのだ。
「織田三郎殿、尾張一国で終わるとは思っていなかったが」
「気付けば伊勢と志摩、美濃を手に入れられ」
「飛騨もな」
 この国もというのだ。
「手に入れて二百四十万石の大身になってな」
「上洛をされて」
「播磨と因幡にも来た」
 そして自分達と境を接したというのだ。
「驚くべきことじゃ」
「今は美濃に帰られたそうですが」
 上洛し将軍を擁立しさらに多くの国を掌握した、目的を達したからだ。
「しかし」
「うむ、天下で他の家を寄せ付けぬ」
「そこまでの家になられましたな」
「その石高は五百万石を優に超え兵は十数万」
「まさに天下第一の家ですな」
「そうなった、急にじゃ」
 まさに気付けばという感じでだ。
「そうなった」
「天下も動いていますな」
「当家もそうであるが」
「天下の全てがですな」
「他には武田家、上杉家、北条家も動いていて」
 そしてというのだ。
「四国では長曾我部家が土佐を統一した」
「ここまで動くとは」
「九州もであろう」
「大友家が大きくなっていますが」
「島津家もじゃ」
 この家もというのだ。
「力をつけてきておる」
「四人の兄弟が力を合わせていますな」
「そして薩摩及び大隅から兵を進め」
 そのうえでというのだ。
「攻め上ってきておる」
「九州の南から」
「そこで大友家や龍造寺家とどう戦うか」
「そのことがですな」
「わしはまだわからぬが」
 それでもというのだ。
「九州も大きく動いていることはな」
「確かですな」
「左様じゃ」
 まさにというのだ。
「天下の全てが動いておるな、奥羽でも伊達家がどうもな」
「あの古い家がですか」
「鎌倉の頃からあるが」
「あの家もですか」
「動くやも知れぬ、ご嫡男が出来物という」
 それでというのだ。
「だからな」
「奥羽でもですか」
「伊達家が動きな」
 そうしてというのだ。
「かなりの家になるやもな」
「そうなのですか」
「とかく天下はな」
「これから大きく動きますか」
「そしてな」
「そして?」
「天下統一もな」
 これもというのだ。
「若しやな」
「有り得ますか」
「若しかしてわしが死ぬまでにな」  
 その天下統一がというのだ。
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