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コネで入って
第四章

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「あんたが続けるならね」
「それならなの」
「やればいいわ、うちのお店はやる気があるなら」
「やっていいのね」
「それで素行がよかったらね」
「能力はいいの」
「能力は働いてね」 
 その中でというのだ。
「身に着くって考えだから」
「そうなの」
「というかあの忙しさの中で暫く働いていれば」
 そうすればというのだ。
「自然とよ」
「お仕事覚えるの」
「そうなるから」
「それでなの」
「あんたがやりたいなら」
 つまりやる気があるならというのだ。
「明日からも宜しくね」
「そうしていくわね」
「うちのお店は確かに忙しいけれど」
 最前線の如くだ。
「お給料はいいし時間通りではじまって終われるから」
「ホワイトなのね」
「ええ、そこはしっかりしてるから」
 だからだというのだ。
「そこは安心してね」
「うん、じゃあまた明日ね」
「お店で頑張ってね」
「そうするわ、しかしね」
「しかし?」
「いや、世の中甘くないのね」
 愛美は愛海にしみじみとした口調で言った。
「コネで入ったのに」
「お店に」
「それで気楽にお金稼いで」 
 そうしてというのだ。
「暇を潰すつもりだったのに」
「そこまではすんなりいっても」
「お店が物凄く忙しいとか」
「そうよ、世の中甘くないのよ」
 姉もこう言った。
「こうしたことでも何でもね」
「そうよね」
「これから気をつけなさい、あとうまいお話には裏がある」
「それもあるわよね」
「地上の楽園と言われて言ったら地獄だったとか」
 北朝鮮のことだ、この国に行って生きて帰った帰国事業であちらに行った人は文字通り一人も存在していない。
「あるからね」
「本当に世の中甘くないわね」
「そのこと覚えておきなさいね」
「わかったわ」 
 妹は姉の言葉に頷いた、そうして家に帰って。
 夕食を元気よく食べて風呂に入ってぐっすりと寝た、それから次の日も学校に通ってからアルバイトに出た、一ヶ月程死にそうだったがやがて慣れて普通になっていた。そして大学に入ってからもアルバイトを続けた。


コネで入って   完


                2020・8・29
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