信じる者
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怒り、憎悪、恐怖。
これまで数多の表情を見てきた彼にとって、シオンの表情は予想だにしないものだった。
「お前に、憧れてたんだ…」
戦場には似合わない優しい微笑み…
「SAOで初めて殺りあった時、敵のはずのお前に、お前達に…」
「何…?」
“憧れ”
その言葉にバーデンの表情は僅かに歪んだ。
今まで日陰の道を歩んできた彼にとって、その言葉はやけに大きく、そしてはっきりと聞こえた。
「『あんなヤツになりてぇ』それだけを思ってただひたすら追いかけた。追いつきたくて、追い越したくて…。お前に十番勝負を申し出たのも、結局は一番近くでお前を見るためだしな」
「そんな、ことで…?」
憧れだけでそこまでのことをしたシオンに対し、バーデンは半分呆気にとられていた。
「おかげで色々と知れたよ。紅茶が好きで、しっかりものに見えてたまにドジなところもあって、雪の日にちょっとだけ気分が上がったり、誰よりも負けず嫌いで、諦めも悪くて、自己犠牲の塊で、めんどくせぇ…」
シオンは一つ一つ確かめるように呟いていった。
これまでの、シュタイナーとの日々を振り返るように。
「でも…」
そんな彼だから見えるのだろう。
シュタイナーという男の本質を……。
「誰よりも優しく、誰よりも“命の重さ”を知っている」
「ッ…!?」
「多くの人を殺してきた。そのしんどさは俺には分からない。でも、それによって救われた人達の思いは知っている。今、お前には確かに殺した人達の命がのしかかってるかもしれない。でも、それ以上に…」
シオンは真っ直ぐ前を見据えて言った。
「救った人達の願いが、祈りが、お前を支えているんだ!」
「願いや、祈り…」
「現にお前を慕い、信じているやつがここにいる」
そう言ってシオンは視線を離れた丘いるもの達に向けた。
そこには先ほどよりも遥かに多いギャラリーが並んでいた。
「行けシュタイナー!」
「がんばれ!」
「シオンなんざぶっ飛ばせ!!」
「ファイトです!」
「気張れやシュタイナー!!」
「勝て!」
溢れる歓声、そのほとんどがシュタイナー自身に向けられていた。
その歓声に思わず体が震える。
そんな中でも一人の声がやけにハッキリと聞こえた。
「勝って!!シュー兄ィッ!!!」
「ユウキ…」
その声は細くも力強く、真っ直ぐに彼の元に届いた。
「信じて待ってる奴らがいる。さあ、お前はどうする?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
多くの人間を殺してきた。
それはもう、戻ることができ
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