伴装者ヒロピン&ナンパネタ
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「ごめんなさい、翼」
「マリア、私の事はいい」
世界を席巻する二人の歌姫、風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴ。
二人は今、テロリストの襲撃に巻き込まれてしまい、捕らえられてしまっていた。
頼りになるマネージャー兼護衛である緒川とツェルトは、飲み物に薬を盛られてしまったらしい。
ギアのペンダントはあるが、自分達以外のスタッフを巻き込むわけにはいかず、纏う事が出来ない。
「悪く思うなよ?お前達を人質にすれば、政府は金を寄越さずを得ない。何せ世界を代表する二大アイドル、その内片方は父親が日本政府のお偉いさんなんだろ?」
「くだらんな……」
「何ぃ?」
リーダー格の男を、翼は毅然と睨みつける。
「くだらぬ、と言ったのだ。お父様が貴様ら如きの要求を呑むはずがない。力無き者達の生命を人質にしなければ事も起こせぬ卑怯者、そのような輩がのぼせ上がるな!」
「翼ッ!」
翼はテロリストのリーダーへと、堂々と啖呵を切った。
彼女は防人として、大人しく口を噤んでいられる性分ではないのだ。
「……気が変わった。身代金を要求するまえに、その生意気な口を聞けなくしてやろう」
「私はどうなっても構わん。だが、マリアは解放してもらおうか」
「人質のクセして大きな口を……」
「ほぅ、いい覚悟だ。お前みたいに気の強い女は、嫌いじゃないぜ」
下衆な笑みを浮かべるテロリスト達。
おそらく、テロリスト達は約束を守らないだろう。
しかし、少しの間でも自分に注意が向けば、マリアが次の行動を起こしてくれるはず。
分の悪い賭けだが、今はそれしかない。マリアも分かっているはずだ。
翼が我が身を危険に晒す道を選ぼうとした、その時だった。
「そうはさせませんよ、翼さん」
テロリスト達の背後から、月光と共に現れる黒い影。
武装したテロリスト達の影には、サバイバルナイフが突き刺さっていた。
「ッ!?動けねぇ!?」
「まさか、その男はッ!?」
「噂に聞く、日本政府のNINJA!?」
「アイエエエッ!?NINJA!?NINJAナンデ!?」
部下達が一様に悲鳴を上げた。
「こいつッ!」
拳銃を取り出すテロリストのボスだったが、それより一瞬早く、緒川の銃弾がリーダーの影を撃ち抜いた。
「ッ!?体がッ……」
「影縫い……。暫く動かないで貰いますよ」
「緒川さんッ!」
緒川は翼の身体を縛る縄を解く。
動きを封じられ、ボスは驚きに顔を歪める。
「何故だ!?痺れ薬は規定値以上に混ぜた筈だぞ!?」
「忍びたるもの、常にあらゆる事態を想定しておくべきもの。薬を盛られた時の対策ぐらいしています。……彼の場合は、少し特殊ですが」
「マリィ、無事か!?」
「ツェルト!」
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