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猫は見える
第三章
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「俺好きだからな」
「飲むのね」
「ああ、そうするな」
 こう言いつつだった。
 大樹は今は酒を飲んでいた、それでそのぶどうサワーの缶に手を出したその時に陽太が自分の席に戻って言ってきた。
「チャコとチロが玄関の方にいるけれど」
「どうしたんだ?」
「何か様子がおかしいよ」
「様子が?」
「ちょっとね」
「おかしいって」
 早苗は弟のその話に怪訝な顔になって言った。
「どうしたの?」
「ちょっと見に行くか?」
 兄も言ってきた。
「そうするか?」
「そうね、じゃあね」
「ああ、どうしたんだ」
 大樹は陽太の案内で早苗と共に家の玄関に向かった、すると玄関のところでチャコとチロがちょこんと座ってだった。
 玄関のドアをじっと見ていた、それで鳴いていた。
「ナア」
「ニャア」
「ドアの方に何かいるの?」
「いないよね」
 陽太は姉に言った。
「何も」
「ええ、何もいないじゃない」
 早苗が見てもだった。
「別に」
「そうだよね」
「まさかお盆だから」
 早苗は眉を顰めさせて最近読んで得た本の知識から言った。
「幽霊が帰ってきていて」
「幽霊って?」
「お盆ってあの世にいる人が帰って来るのよ」
 弟にそうした時であることを話した。
「幽霊って」
「怖くない幽霊だそうだから」
 幽霊と聞いて怖がった弟にこの本から得た知識も話した。
「安心していいみたいよ」
「そうなんだ」
「それで猫は幽霊が見えるらしいの」 
 姉は弟にこのことも話した。
「だからね」
「チャコとチロは玄関の方見てるの?」
「そうじゃないの?」
「そうかもな」 
 大樹も否定せずに二人に言った。
「小さい虫見てるかも知れないけれどな」
「幽霊を見ているかも知れないの」
「お兄ちゃんもそう思うんだ」
「そうかもな、お盆だからな」
 この時期だからだというのだ。
「そうかも知れないな、じゃあな」
「じゃあ?」
「じゃあっていうと」
「実際お盆に帰って来るのはご先祖様だからな」 
 その人達の幽霊だからだというのだ。
「悪い幽霊じゃないしな、それに法事もしたし」
「そのご先祖様のことね」
「それもしたしな」
 だからだというのだ。
「俺達はまた西瓜食ってお喋りしていいだろ」
「甘いものも飲んで」
「そうしていいの」
「別にチャコとチロも警戒しても怖がってもいないしな」
 見れば見ているだけだ、ただそれだけだ。
「それじゃあな」
「別になのね」
「いいんだね」
「ああ、じゃあ戻ってまた西瓜食おうな」
 こう言ってだった、大樹は妹と弟を連れて宴会の場に戻った。そうしてそこで西瓜を食べ甘い酒も楽しんだ。
 そして宴会が終わるとだった、後片付けをしていた一家のところに。

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