第90話『告白』
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うなことあるよ」
「…え?」
「結月が他の男子の名前呼んだ時とか、何だかムッとしちゃうことがあるんだよね」
事実だ。些細な感情だが、確かに感じた。今までは無視してきたけど、もう受け入れなければならない。
優菜よりも誰よりも、晴登は結月のことを──
「今日はさ、結月に伝えたいことがあるんだ」
「伝えたいこと…?」
「いつも待たせてたみたいだからさ、その返事を」
その言葉を聞いて、結月は何を言うのか察したようだった。この展開は予想してなかったのか、あたふたとしている。
──晴登が意識していたのは、前にも今にもたった1人だけだ。
「これまでは色々悩んでたけど、もう今の自分に正直になることにしたよ。俺は結月のことがす──」
ドーン!
「うわ、花火だ」
「…えっ」
晴登が一世一代の言葉を告げた瞬間、それを覆い尽くすほどの大きな音と共に夜空に一輪の花が咲いた。そう、花火である。
「嘘だろ、このタイミングでかよ…」
確かにもう開始時刻を回った頃だろう。最初の花火を皮切りとして、数多の花火が打ち上げられ始めた。
水面で色とりどりの光が乱反射し、幻想的な光景を紡ぎ出す。ムードとしては申し分ないセットだ。タイミングを除いて。
告白が花火で遮られるという展開はマンガでは定番だったが、まさか本当に起こってしまうとは…。想像以上に虚しい気持ちだ。
もう1回言うのは、さすがにかなり恥ずかしいし・・・
「ハルト」
「な、何…?」
花火のせいで声が届かないからか、結月が耳元で呼んでくる。急に顔が近づいたため、晴登は顔を紅くして応える。
「ちゃんと聴こえたよ、ハルトの言葉。すっごく嬉しい。…ホントはね、ボクの気持ちは迷惑じゃないのかなって少しだけ思ってたの」
「そんなこと…!」
「うん、違った。ハルトはボクのことを見てくれていた。それが知れて安心したよ」
くすぐったくなるような言葉を耳元で言われ、余計にくすぐったい。
すると結月は、極めつけに一言、
「ボクも好きだよ、ハルト」
「結月……んっ!?」
優しく耳元で囁かれたかと思うと、唇に柔らかい感触が伝わる。ついでに首に手を回されてしまい、後ろに身体を引こうにも引けない。
波の小さなざわめきの中で、時折花火の音が響く。それはまるで、世界が彼らを祝福するように、青春の音色を奏でているようだった。
そして5秒くらいその状態を保った後、名残惜しくも感触は離れていく。
「えへへっ、またしちゃった」
「いきなりは卑怯だろ…」
結月の小悪魔のような笑みに、晴登は顔を真っ赤にして呟く。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ