第三章
[8]前話
夏馬にだ、こう切り出した。
「若しよかったら。一月保護してもらいましたし今も懐いてくれていますし」
「うちで、ですか」
「引き取ってくれませんか」
こう言うのだった。
「そうしてくれませんか」
「いいんですか?」
「お願いします」
これが彼の返事だった。夏馬を見て尻尾を振っているポチ太を見ての言葉だ。
「妻には怯えていましたが貴方には懐いてくれていますし」
「それで、ですか」
「お願い出来ますか」
「そうしていいんですね」
「はい」
「それじゃあ詳しいお話を」
「しましょう」
こうして両方の家族単位での話となってだった。
ポチ太は萩原家に入って引き取られることになった、そのポチ太今は庭で遊んでいる彼を縁側で見つつ。
夏馬は一緒にいる両親にこう話した。
「うちに戻って来たっていうのかな」
「そうだな」
「そうなるわね」
「ああ、しかしあの女の人は」
その彼女のことも話した。
「随分とな」
「やっぱり酷い人だったな」
「そうみたいね」
「ああ、そんな人だからポチ太も怯えていて」
そしてというのだ。
「不倫もするんだな」
「そうした人だからな」
「そうしていたのね」
「けれどな」
それでもとだ、息子はこうも言った。
「報いを受けたな」
「離婚して慰謝料支払わさせられて」
それでとだ、母は述べた。
「もうね」
「自業自得だよな」
「そう思うわ、お母さんも」
「そうだよな」
「悪い人はね」
「報いを受けるよな」
「そうなるわね」
「だよな、けれど俺達はな」
夏馬はポチ太を見ながら話した。
「戻ってくれたポチ太とな」
「ああ、一緒にな」
「暮らしていきましょう」
「そうしような」
こう言ってだった、夏馬は立ち上がってポチ太のところに行って彼と遊びはじめた。両親もその中に入って一家で楽しい時間を過ごした。ポチ太はその間ずっと楽しそうに尻尾を振っていた。
捨て犬の真実 完
2020・8・24
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