第六話 約束
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、カガトが一生懸命作ってくれたからに決まってるでしょ」
二人は当然のような顔をしている。
俺が一生懸命作ったから、まずそうなものでも食べる?
なんだそりゃ。
胸の中に、懐かしさがこみ上げてくる。
なんだ。
俺だって、経験があるじゃないか。
妹が分量を間違って、おにぎりが凄くしょっぱくなって。
そのとき、俺はどうした?
同じように食べてたじゃないか。
お茶を飲みながら、なんとか完食してたじゃないか。
あのとき俺が感じたような気持ちを、感じたってことなのだろうか?
だとしたら、コイツらにとって俺は、そういう存在になれたってことか?
「どうしたのさ、カガト。急に黙り込んじゃって」
「なんだかすごく、懐かしい気持ちになってな」
「カガトは昔、ピクニックに行ったことがあるのかもしれないわね」
「ああ。そうかもしれないな」
もし俺が、ユージオやセルカにとってのそんな存在になれたんだとしたら、これほど嬉しいことはない。
そんなことを考えながら、最後の一切れを口に放り込む。
そのあとセルカ手製のサンドイッチをいくつか口に入れてから二人を見れば、やっぱりというかなんというか、一言も会話せず、目も合わせないでただ黙々とサンドイッチを口にしていた。
二人とも、なにを話していいのかわからないのだろう。
今日までのユージオの態度を見れば、間違いなく彼はセルカを避けている。それには十中八九、アリスのことが関係しているだろう。
今のセルカを取り巻く環境を、間接的に作り上げてしまった罪悪感。
顔が似ているらしいセルカを見ることでこみ上げてくる、当時味わった自分に対する嫌悪。
そんな感情がない交ぜになって彼女を避ける、そしてそんなユージオの態度にセルカもどうしていいか分からなくなって、お互い避け合うという今の現状を作り上げてしまったということだろうか。
そんな現状があったからなのか村の人が言うには、二人ともあまり笑わなくなったらしい。ユージオは明確にアリスが連れ去られてから、セルカは物心がついてから。
けれど俺は、この数日間でたくさんの二人の笑顔を見てきた。
きっとそれは俺がアリスを知らない大人だったからだろう。
この村に住んでいれば、村長の娘であり、神聖術の才能に溢れ、将来を嘱望されていたアリスを知らないはずがない。
きっと初めてだったのだ。
自分より年上の人間が、アリスという人と関係なしに自分を見てくれるのが。
だから、ユージオは俺のことを村の人たちには見せないような目で見てくるし、セルカは教会にいる子供たちに向けるのと似たような目で見てくる。
それだから、コイツらのことを放っておけないんだ。
そしてや
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