第五話 セルカ
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夕食を終え風呂場に向かう途中、灰色の寝間着らしき服を着ているセルカとすれ違う。
ふと、昼間の話が蘇り俺は慌てて振り返った。
「セルカ!」
「ど、どうしたの? そんなに慌てて」
「少し話があるんだが……今夜時間あるか?」
セルカは訝し気に俺を見る。
しばらく沈黙を続けていたが、声量を抑えながら答えた。
「……少しなら、いいわ。あたしの部屋はもう子供たちが寝てるから、あなたの部屋で待ってる」
俺の言葉を待たず、セルカは足早にこの場を去った。
セルカを待たせるわけにはいかないと、俺も足早で風呂へと向かった。
「悪い、待たせたか?」
ベッドに腰かけていた少女に詫びる。
「大丈夫よ。一人は嫌いじゃないから」
そう言いながら口を尖らせるセルカに、思わず苦笑してしまう。
俺がベッドに腰かけたタイミングで、セルカは口を開いた。
「それで、話ってなに?」
「………今日ユージオと話してているときに、君の名前が上がってさ。そのときユージオが言ってたんだ。セルカは頑張りすぎてる、ってな」
「ユージオがそんなことを?」
「ああ。心配してたぜ。セルカは住み込みまでして頑張っている、アリスはしていなかったのに、て言っていた」
「……そう……」
「……どうして家を出たのか、訊いてもいいか?」
セルカは少し顔を伏せた。
しばらく逡巡したようだったが、覚悟を決めたようで顔を上げてくれた。
「………家にいると、とても居心地が悪いのよ。お父様も、お母様も、アリス姉様とわたしを比べて、いつも溜息をついてた。他の大人たちもそうよ。だから、家を出て教会に入ったの」
「……そうか。教会に入ってからは、どうだ? まだそういう目で見てくる大人はいるか?」
「え? シ、シスター・アザリヤも時々そういう目で見てくるときもあるけど……でも、なん」
「わかった。俺が明日、その人たちに言いに行ってやろう」
確か明日は安息日だったか。
丁度いい。
「待ってカガト! どうしてそんな話になるの!?」
「どうしてって、セルカは嫌なんだろう? そういう目で見られるのが」
「そ、それは、そうだけど……」
「なら、俺に任せろ。ガツンと言ってきてやる。『もう二度とアリスとセルカを比べるな!!』ってな」
「わ、わたしは! そんなこと、して欲しく、ない……」
セルカが語気を強めた。
少し強引過ぎたか。
「…………ゴメン、セルカ。冗談だよ」
「……」
「……でも、俺は周りにそんな目で見られても、めげずに頑張っているセルカの姿を昨日今日と見てきた。だから、君が強いのは十二分に分かってる。でも、だからこ
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