第五話 セルカ
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に出ることを危惧してたからこそ、その場所を伝えなかったのだろう。
この事態は俺の責任だ。
俺がセルカを引き留めるしかない。
「買い出しか。なら俺も手伝うぜ。男手はあった方がいいだろう?」
「え? そ、それは……」
セルカが戸惑い始めた。
このまま畳みかけるか。
「そういえば今思い出したんだけど、今日ピクニックに行こうと思ってたんだよ。その材料もついでに買っていくか」
「あ、あの、でも今日は……」
「あれ? でも今日は安息日だったよな? なら店はやってないはずじゃ。セルカ、日付間違えてないか?」
少し強引にやりすぎたか。セルカが訝し気な目で見てくる。
やがてセルカは少しため息をついた。
「……そうね。今日は安息日だったわね。あたしが勘違いしてたみたい」
もしかすると俺の意図に感づいたのかもしれないが、諦めてくれたのならば問題ない。
しかし、ピクニック行くというのは口から出任せだったが、なかなかに良い案だ。これを利用すればユージオとセルカの関係を修復できるかもしれない。
「セルカは今日用事あるか?」
「……とくにないけど……」
「なら一緒にピクニックに行こうぜ。日頃の気分転換も兼ねて」
突然の提案に驚いた顔をする。
「で、でも、お弁当とかどうするの?」
「シスターに言って、少しわけてもらおう。ダメなら今日の俺たちの昼飯分だけでももらえるか交渉する」
「子供たちの世話は? どうするの?」
「セルカが教会に入る前はシスターが一人でやってたんだろ? 半日くらいならシスターも許してくれると思うぜ」
他に反論材料が思いつかなかったのだろう。
セルカが頭を悩ませている。
「そういや、セルカって料理できたよな?」
「それは、できるけど……」
「なら、弁当を作ってくれないか? 簡単なものでいいからさ。勿論、俺も手伝うよ」
セルカは根負けしたようで、軽く頷いた。
「その代わり、ちゃんと手伝ってね」
俺が頷いたと同時に、鐘の音が教会に響く。
気づかないうちに太陽が昇っていたらしい。
「カガト、ちゃんと着替えてきなさい。お祈りのときに寝間着なんてダメなんだから」
そう言って、セルカは微笑んだ。
淀みない笑顔だった。
図らずも妹と重ねてしまい、目頭が熱くなるが抑え込み口を開く。
「了解」
俺は来た道を逆戻りするのだった。
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