第五話 セルカ
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あるから。カガトなら起きれると思うけどね」
「了解。今日はありがとうな」
「うん。それじゃあ、お休みなさい」
「おう、お休み」
そう返事をするとセルカは一瞬だけ微笑み、ドアを開けその向こうに消えた。
さぁ寝ようかと上体を横に倒すと、否応なしにセルカの顔が脳裏に浮かび上がる。今は亡き妹の面影を感じるあの少女のことを。
知らず知らずのうちに、枕が湿っていた。
もう七年前も前のことなのに、今でも鮮明に思い出すことができる。
授業中先生に呼ばれ、急いで駆け付けた病室には、あいつが力なく横たわっていて……。
ああ。
今日はもう。
寝れそうにない。
◆
結局、昨夜は一睡も出来なかった。
脳が覚醒しているらしく、あまり眠気を感じない。
まだ鐘は鳴っていないが暇だったので、少し外に出てみることにした。朝日が昇る前のルーリッド村がどんな様子なのか見てみたかったのだ。
扉を開けて廊下を歩いていると、別の場所から似たような扉を開ける音がした。この世界で物取りは存在しないはずだから、開けたのはこの教会の誰かだろう。
誰かが起きたのなら話しかけに行こうかとも思ったが、相手がセルカかもしれない可能性に行き着きやめた。若い女性はあまり寝起きを異性に見られたくない、と昔誰かに言われたのが脳裏を過ったからだ。
俺は当初の予定通りルーリッドを一望するべく歩いていると、人影と出くわした。少し薄暗かったが目が慣れていたため、誰か判別できた。
「おはよう、セルカ」
寝起きの顔を見ないように少し目線を彼女の服に移すと、白い襟のある黒い修道服が目に入る。てっきり寝間着だと思っていたが、どうやらもう着替え終えていたらしい。
なら大丈夫かと目を合わせようと視線を少し上げると。
「……ええ。おはよう、カガト」
そこには、バツの悪そうな顔をしたセルカがいた。
なんで彼女がそんな表情をしているのかわからなかったが、まぁそこはいいだろう。
「こんな朝早くに何処に行くんだ?」
「えと、ちょっとそこまで……」
「何をしに?」
「か、買い出しに行こうかなって……」
嘘だろう。噛んでるし、なにより目が泳ぎまくっている。
普段からあまり嘘をつき慣れていないからだろうが、逆に言えばそんな娘が嘘をついてまで行きたい場所。昨日の話と照らし合わせれば、自ずと見えてくる。
おそらく、アリスとユージオが行った北の洞窟。
アリスが央都に連れ去られ、自分がこんな目で見られる原因となった場所。
その場所を見ておきたかったのかもしれない。
だとするならば、これは完全に俺のミスだ。
多分、ユージオはセルカがこの行動
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