第五話 セルカ
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そ、本当に耐え切れなくなったら誰かを頼ってほしい」
「……え?」
「勿論、俺を頼ってもいいし、俺が信頼出来ないならユージオでもいい。ただ一つわかってほしいのは、俺はセルカのために動ける用意がある、てことだ。さっきの話は冗談だったけど、もし今セルカの心がボロボロに傷付いていて俺を頼ってくれるなら、明日と言わず今すぐにでも言いに行ってもいい」
セルカは顔を俯かせながら、口を開いた。
「……どうして、そこましてくれるの……?」
どうして、か。
そんなのは決まっている。
……面影を重ねてしまうから。優しくて頑張り屋で、少し無理をしがちな、俺の妹に。
――なんて言えるわけもなく。
「……セルカを見てると、なんだか懐かしく感じるんだ。それで、なんか放っておけなくてさ」
「それってもしかして、記憶が……?」
「まだそう感じるってだけで、何かを思い出したわけではないんだけどな」
「そう………ねぇ、この話をするためだけに私を呼んだの?」
「そうだけど……?」
俺がそう答えると、セルカは急に笑い出した。
文字通り腹を抱えて。
それから数分間笑い続け、茫然しながらその様子を見ていた俺に気がついたのか、ようやく彼女は笑い終えた。
「ごめんなさい。……カガトってお人好しだったでしょ?」
「お人好しかぁ。久しぶりに言われたような気がする」
確かに小学生の頃によくそう言われていたような記憶がある。
「なら記憶が無くなる前は、そうじゃなかったかもしれないわね。それはともかく、今日はありがと。なんだか少しスッキリしたわ」
「それなら良かった」
ある程度解消出来たのなら、セルカを部屋までよんだ甲斐があった。
そんなことを考えているとセルカが立ち上がった。
「そろそろ戻るわね。もうすぐ九時になりそうだし」
「それもそうだな。だったら部屋まで送るよ」
「大丈夫よ、教会まで襲ってくる動物なんていないんだから」
失念していた。
この世界では禁忌目録によって、他人に襲われるという概念がなかったのだった。
「あ……少しカガトに訊きたいんだけど……」
「ん? どうした?」
「カガトはどうして姉様が連れていかれたのか、その理由を知ってる?」
「確か北の洞窟を抜けて闇の国に手を触れてしまったから、てユージオは言ってたけど。でも、何でまた?」
「あたしは知らないのよ。お父さんたちは何も言わないし……ずっと前にユージオに訊いたんだけど、教えてくれなくて。でもそう……北の洞窟に……」
セルカは何事か考えているようだったが、すぐに小さく頷いて続けた。
「明日は安息日だけど、お祈りだけはいつもの時間に
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