第四話 青薔薇
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
オの忠告を心に留めながら、紐を外し、革袋を下にずらしていく。
俺は息をのんだ。
現れたのは、一振りの長剣だった。
柄は精緻な細工が施された白銀製で、握りにはきっちりと白い革が巻かれている。護拳には植物の葉と蔓の意匠が凝らされており、握りの上部には青い薔薇の花が施されている。
「《青薔薇の剣》。本当の銘かどうかわからないけど、おとぎ話じゃそう呼ばれてる」
「そのおとぎ話って、『ベルクーリと北の白い竜』ってやつか?」
「そうだけど……よく知ってるね」
「昨日、セルカが子供たちに聞かせてたんだよ。確かベルクーリって剣士が果ての山脈で白竜に出会うんだったか」
「そう、そのとき白い剣を見つけて拾い上げようとしたら、白竜が目を覚まして……」
「そのおとぎ話に出てくる剣が、この剣だっていうのか?」
「おそらくね。六年前、果ての山脈に探検しに行ったとき、この剣の上には刀傷がついた骨の山があったから」
「それはつまり、白竜は誰かに殺された……?」
「解らないけど……おそらくね」
ユージオは仄かな感傷の滲む声で続けた。
「その帰り道、僕とアリスは間違えて闇の国側に出ちゃったんだ。あとは昨日話したとおり」
「なら、なんでこの剣がここにあるんだ?」
「一昨年の夏、もう一度北の洞窟まで行って、持ってきたんだ。安息日に少しずつ運んで。……なんでそんなことしたのか、自分でもよく解らないんだけどね」
おそらくユージオは、許せなかったのだろう。
アリスを連れて行った、整合騎士を。
アリスが連れていかれるのを、黙って見いていた自分を。
だからこそ、この剣を苦労しながらもここまで運んできた。整合騎士に抗う手段として。
「そろそろ帰ろうか。もうすぐ日が沈む」
「……そうだな」
ユージオに首肯し、俺たちは帰路へと就くのだった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ