第四話 青薔薇
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の娘は毎日弁当を持って来てくれていたのか?」
「そうだよ。アリスは才能があったから、シスター・アザリアのもとで神聖術を学んでいたんだ。それが午前中までだったから、そのあと出来立てのお弁当を持って来てくれてたんだよ」
「てことは、アリスは教会で勉強してたんだよな? じゃあ、今教会にいるセルカって娘は……」
「ああ、彼女はアリスの妹なんだ。アリスが央都に連れていかれた後、シスターはもう弟子を取らないって言ってたんだけど、村長が説得してね。一昨年セルカが教会に入ったんだ」
今朝、セルカがユージオという単語に反応したのは、彼女がアリスの妹だったからのようだ。もしかすると、ユージオがあまり教会に顔を出さなくなったのも、セルカがいるからかもしれない。
「まぁでも、頑張ってるみたいだったぜ。昨日なんか、なかなか風呂に入らない子供たちに少し苦戦してたけど、めげずに相手してたからな」
「彼女は頑張り屋さんだからね。でも……セルカは少し頑張りすぎているような気がして……」
「そうなのか?」
「アリスはシスターに弟子入りした後も、別に住み込んではいなかったんだ。僕に弁当を届けた後、アリスは家の仕事の手伝いをしてた。でもセルカは、勉強時間が足りないからって、家を出たんだ。まだ十二歳なのに」
「なるほど、それは少し気掛かりだな」
「だからカガト、彼女にあまり迷惑かけないようにね」
「了解。帰ったらセルカの手伝いでもするよ」
俺の返答に満足そうに頷くと、ユージオは立ち上がった。
「それじゃあ、満腹になったことだし。そろそろ続きをしないと」
「期待していいぜ。午後からは俺も手伝うからな」
「それは頼もしいね。昨日、教えたことまだ覚えてるかい?」
「ああ、もちろん。さっさと終わらせよう」
そのあと森の中に、規則的な音が鳴り響いた。
◇
「なぁ、なんでこれだけ布に覆われているんだ?」
それは物置小屋に無造作に放り出されていた。
長さは一メートル二十センチほどだろうか、細長い革製の袋だ。
「ああ、それか。開けてみればわかるよ」
悪戯っぽい笑みを浮かべるユージオが少し気になるが、無視してその袋を持ち上げようとして驚いた。尋常ではないほど、この革包みは重かったのだ。
非難めいた視線を笑っているユージオに送る。
「ごめんごめん。カガトがどんな反応するのか見たくてさ」
「ったく。罰として持ち上げるの手伝えよ」
「わかったよ」
「せーの」と二人で息を合わせることで、やっとこさこの細長い何かを立たせることに成功した。
「開けていいか?」
「でも、気を付けてよ。足に落としたらかすり傷じゃすまないぞ」
ユージ
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