第四話 青薔薇
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L》でこの世界にきたのか。最低でも二桁、いや三桁は必要になってくる。それほどの数を《RATH》が作り出したというのか。それはあまりにも無理がある。一台の管理で十何人もの人間が必要なマシンが、三桁もの数存在しているとは思えない。
とすると、この世界の住人は一体――。
不意に音が届いた。
昨日、何百回と聞いた音。
その音の方角に進めば、巨大な樹にたどり着く。
そしてその下には灰色がかったブラウンの髪の少年が、昨日と同じように一心不乱に斧を振っている。
「精が出るな、ユージオ」
そう後ろから話しかけると、ユージオは腕を止めて振り返った。
「カガト! 来てくれたんだね! あれ、でも今日は村の人たちの天職を手伝う、て言ってなかった……?」
「それは午前中だけだ。いろんな人に話を訊けば、何か思い出せると思ったんだけどな……」
「……そう」
実際にはこの世界について情報収集していただけだが、騙す形になったのはひどく心苦しい。
そんな胸のつかえを強引に奥にやり、右手に持っていた籠を軽く上げて見せる。
「そんなことよりこれ、良いモノ持って来てやったぜ」
「良いモノ?」
怪訝そうな顔をしているユージオを尻目に、俺はその場に座り込んだ。
そして、持っていた籠を流れるように開く。
「……も、もしかしてそれって……?」
驚いてる様子のユージオに、思わず口角を上げる。
「ああ。パン屋のおっさん自慢の、外カリッ中ふわっな絶品パン。しかも出来立てアツアツだ」
籠から漂ってくる香ばしい香りにやられたのか、ユージオは胃袋を大きく鳴らした。
「さっさと座れよユージオ。早くしないと天命が尽きちまう」
「う、うん」
ユージオは手に持っていた斧を急いで立てかけ座り込む。
それに合わせ、俺はいそいそとパンを取り出し齧り付いた。
パン屋のおっさんが言ってた通り、外側は少し硬く、けれど中はふんわりとしている。バターが生地に練りこまれているのか、ほのかな甘みが舌に残った。
パンのうまさに舌鼓を打ちながらふと、目を前に向け、思わず動きを止める。
泣いていた。
笑顔を浮かべながら。
俺の視線に気づいたユージオが慌てて服の袖で涙を拭う。
「………ねぇ、カガト」
「どうした?」
「今日、村の人たちの天職を手伝ってたのって……」
「七割くらいこれのためだ。昨日、助けてもらったお礼をしたかったからな」
ユージオは軽く笑った。
「ありがとね。なんかこうしてると、思い出すんだ。六年前も、こんな風に二人でこの樹の前で昼ご飯を食べてたなって。そのときはアップルパイだったけどね」
「アリス、だったよな。そ
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